研究実績の概要 |
連携研究者金銅誠之、島田伊知朗両教授との共同研究として、標数5の超特殊K3曲面(2次元カラビ・ヤウ多様体)Xの上の有理曲線を調べ、超特殊アーベル曲面上に5種類の代数曲線を構成することにより、幾何学的にX上に96本の非特異有理曲線を構成した。その96本の有理曲線は16本ずつの6つの組に分かれ、そのうちの2つの組をとると、16_4, 16_6または16_{12}-configurationをなすという高い対称性を有する。K3曲面上の16_{12}-configurationの存在は、これまで知られていない新しい現象であると思われる。Xのネロン・セヴェリ格子NS(X)はindex (1, 25)のeven unimodular lattice Lにprimitiveに埋め込めるが、このとき、この96本の有理曲線は、LのあるWeyl chamberをNS(X)に射影して得られるinduced chamber のwallsをなすLeech rootsに対応する。これ以外のinduced chamberのwallsをなすLeech rootsとして、256本の非特異有理曲線や、168本の非特異有理曲線の存在も格子理論を用いて示せ、256本の有理曲線については、その幾何学的な構成法も見い出せた(雑誌論文欄の第1論文)。 単著の研究として、超特殊アーベル曲面Aのネロン・セヴェリ群NS(A)を多元環の元として捉え、交点理論を具体的に整備した。それを用いて、アーベル曲面のChern mapの考察を行い、NS(A)/pNS(A)からAの1形式のなす層を係数とする第1コホモロジー群へのChern mapが単射であるための必要十分条件はAが超特殊ではないことである、という定理を証明し、Aが超特殊である場合のChern mapの核が有限体F_p上2次元であることを示して、核の基底をA上の因子を用いて具体的に与えた(雑誌論文欄の第2論文)。
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