昨年度の実績報告書の「現在までの達成度」の項に有限体上の3次元射影空間内の曲面の有理点の個数について,(以前証明した)elementary bound と名づけた不等式の等号をとる場合の分類について,その研究途上で小さな見落としに気づいたことを述べた. 具体的に述べれば,q元体上定義された,3次元射影空間内のd次曲面 (ただし,ここでの「曲面」は特異点を持っても良いし,必ずしも既約でなくとも良い.ただq-有理平面を成分に持たないということだけを要請しておく) のq-有理点の個数は ((d-1)q+1)(q+1) で上から押さえられる.(これが,上で elementary bound と呼んだものである.) さて,問題はq-有理点の個数がちょうどこの数となる曲面の分類である.昨年度あるいは,それ以前のわれわれの研究により,そのような曲面の次数の可能性は 2,q が平方数で q'+1 (q' はqの平方根),q+1 の3通りしかないことが分かっていた.結果は d=2 の場合は Hyperbolic曲面,q が平方数で d=q'+1 のときは,Hermitian曲面,d=q+1のときは,3次元射影空間の全てのq-有理点を含む最小次数の非特異曲面となるのであるが,第二の場合の証明に小さな見落としがあった.証明はその性質を持つ曲面の平面切断を考え曲線での結果をもちいるのであるが,q=4の場合はd=3となり,このアイデアが直接には機能しなかった.この場合をを適切にに迂回することによって,ここに述べた結果を確定させたことが本年度の主要な成果である.
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