研究概要 |
1. 局所化された交叉理論における Thom 類の応用 : 現在までのの研究で Cech-de Rham コホモロジーおよびそれに適合させた Chern-Weil 理論が重要な役割を果してきた. この理論の枠組みで定められる Thom 類は強力で, 交叉理論でも有効である. これに関して, イタリア, ローマ大学 F. Bracci, フェッラーラ大学 C. Bisi, 北海道科学大学 伊澤 毅 との共同研究で一般の current に対し局所化された交叉理論を構築した. この応用として二つの可微分写像に対して一般的な一致点定理を証明した. Thom 類の局所的表示を用いるとこれから古典的な Lefschetz 一致点公式 (Lefschetz 不動点公式を含む) が直ちに得られる. 2. Hermitian 葉層構造の留数理論 : 本研究代表者は前述の Cech-de Rham コホモロジーを用いて複素解析的特異葉層構造の留数理論を統一的に展開し, 1998 年に Hermann 社より成書を出版した. 現在これは様々な方面への発展をみている. その一つとして, ブラジル, ミナスジェライス大学の M. Correa との共同研究で Hermitian 特異葉層構造の留数理論をを構築した. これのために Bott-Chern コホモロジーを局所化に適するように精密化した Cech-Bott-Chern コホモロジー理論を展開した. これは特に非 Kaehler 多様体上の特異葉層構造の解明に有効であることが期待される.
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究を継続し、さらに次のような課題につき研究を行う: 1. 交叉理論: Chern 類の留数は枠の特異点集合のホモロジー類として定められる. 特異点集合の次元が“期待されたもの”である場合には今までの研究で満足出来る成果が得られ, その結果交叉理論でも交叉の次元が期待されたものである場合には明示的公式が得られた. 次に特異点集合, 交叉の次元が大きい場合を考察する. 2. Atiyah 類の局所化: (1) 正則ベクトル束の Atiyah 類の枠による局所化に付随した留数の構造を解明する. これは解析的交叉理論において大変興味深く重要と思われる. (2) 複素解析的 Thom 類を導入しその応用, 特に Dolbeault 複体に対する Lefschetz 不動点定理の幾何学的な簡明な証明を与える. さらに多様体が特異点を持つ場合への拡張を試みる. これは多変数関数論の深い問題と関わっている. 3. その他: (1) 軌道体特性類, (2) 群作用による局所化問題, (3) J.-M. Bismut, E. Witten 等による関連問題の解析的扱いとの関連, (4) Atiyah 類と Rozansky-Witten 不変量の関係等.
|