研究実績の概要 |
本研究代表者が展開している特性類の局所化理論は位相幾何学的側面と微分幾何学的側面を持ち, 両者を合わせることにより多くの重要かつ興味深い明示的結果が得られる. 特に Cech-de Rham コホモロジーおよびそれに適合させた Chern-Weil 理論の枠組みで定められる Thom 類は強力で, 局所化された交叉理論で極めて有効である. 1. これに関しイタリア, ローマ大学 F. Bracci, フェッラーラ大学 C. Bisi, 北海道科学大学 伊澤 毅 との共同研究で一般の current に対し局所化された交叉理論を構築した. この応用として次元が相異なるかも知れない多様体間の二つの可微分写像に対し, 大域的, 局所的一致ホモロジー類を定義し, 一般の Lefschetz 型の一致定理を証明した. また一致点集合が部分多様体になる場合に局所的一致ホモロジー類を具体的に求めた. さらにフランス IML J.-P. Brasselet との共同研究で一致点集合が特異点を持つ場合にも局所的一致ホモロジー類の精密な明示的公式を与えた. またこれらを写像が二つ以上ある場合にも拡張した. 2. 上記局所化理論の他の応用として, ブラジル, ミナスジェライス大学の M. Correa との共同研究で Hermitian 特異葉層構造の留数理論を構築している. このために Bott-Chern コホモロジーを局所化理論に適するように精密化した Cech-Bott-Chern コホモロジー理論を展開している. これは特異葉層構造の新しい留数を与え, 特に非 Kaehler 多様体上の特異葉層構造の解明に有効であると期待される.
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今後の研究の推進方策 |
前年度までの研究を継続し, さらに次のような課題につき研究を行う: 1. 交叉理論:Chern 類の留数は枠の特異点集合のホモロジー類として定められる. 特異点集合の次元が "期待されたもの" である場合には今までの研究で満足出来る成果が得られ, その結果交叉理論でも交叉の次元が期待されたものである場合には満足出来る結果が得られる. 次に特異点集合, 交叉の次元が大きい場合を考察する. 2. Atiyah 類の局所化:(1) 正則ベクトル束の Atiyah 類の枠による局所化に付随した留数の構造を解明する. これは解析的交叉理論において大変興味深く重要と思われる. (2) 複素解析的 Thom 類を導入しその応用, 特に Dolbeault 複体に対する Lefschetz 不動点の幾何学的な簡明な証明を与える. さらに多様体が特異点を持つ場合への拡張を試みる. これは多変数関数論の深い問題と関わっている. 3. Bott-Chern 類の局所化:これは Hermitian 特異葉層構造の留数理論に有用で, 特に非 Kaehler 多様体上の特異葉層構造の解明に有効であることが期待される. これに関しては既にブラジル, ミナスジェライス大学 M. Correa と共同研究を開始している. さらに Deligne コホモロジーにおける局所化理論を考察する.
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