研究実績の概要 |
本研究は複素幾何学に現れる問題を主題とするがが, これに用いる特性類の局所化理論は, 位相幾何学的側面と微分幾何学的側面を持ち, 両者を合わせることにより多くの重要かつ興味深い明示的結果が得られる. 微分幾何学的には Cech-de Rham コホモロジーおよびそれに適合させた特性類の Chern-Weil 理論が基本となる. 平成27年度は従来の研究を継続した他, 特に次の課題につき実績をあげた:
1. ブラジル, ミナスジェラエス大学の M. Correa との共同研究で行っている Bott-Chern コホモロジーにおける局所化理論をさらに発展, 深化させた. これは特異 Hermitian 葉層構造の新しい留数を与え, 特に非 Kaehler 多様体上の特異葉層構造の解明に有効であると期待される. これに関して, Cech-Bott-Chern コホモロジーの基本的完全列を見出した. またこのコホモロジーでの Thom 類を定め, 埋め込みの Riemann-Roch の定理を示した.
2. 従来, 局所コホモロジーで表されていた佐藤超関数は相対的 Cech-Dolbeault コサイクルで表すと扱いやすくなり, また関連する双対性定理は Cech-Dolbeault コサイクルの自然なカップ積と積分で表されることを見出した. これは佐藤超関数論のみならず, Dolbeault コホモロジーの局所化理論で扱える複素解析幾何の諸問題にも多大な応用が見込まれる.
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今後の研究の推進方策 |
今年度までの研究を継続し, さらに次のような課題につき研究を行う:
1. Bott-Chern 類の局所化:特異 Hermitian 葉層構造の留数理論をさらに発展させる. また Hermitian ベクトル束の特性類の切断による局所化理論を展開し, 交叉理論等への応用を図る.
2. Cech-Dolbeault コホモロジー理論の深化:(1) 先に述べた佐藤超関数理論との関連をさらに調べる. (2) 局所双対性 (Cech-de Rham における Alexander 双対性に対応するもの) を出来るだけ一般に証明する. (3) これを Atiyah 類の局所化問題に適用する.
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