研究実績の概要 |
本研究は複素幾何学に現れる問題を主題とするが, これに用いる特性類の局所化理論は, 位相幾何学的側面と微分幾何学的側面を持ち, 両者を合わせることにより多くの重要かつ興味深い明示的結果が得られる. 平成 28 年度は従来の研究を継続し, 特に次の課題につき実績をあげた :
1. イタリア, ローマ大学の F. Bracci 達との共同研究で, Lefschetz 一致点公式を次元が異なる多様体間の二つの写像の場合に拡張した. ここでは Alexander 双対性を Cech-de Rham コホモロジーを用いて表し, 一致点集合が特異点を持たない場合の結果を得た. フランス, リュミニ数学研究所の J.-P. Brasselet との共同研究で Alexander 双対性の組み合わせトポロジーによる表現を用いてこれを精密化し, 一致点集合が特異点を持つ場合にも, 局所的一致ホモロジー類の明示的公式を与えた. この理論をさらに発展させ論文に纏めた. 2. ブラジル, ミナスジェライス大学の M. Correa との Bott-Chern コホモロジーにおける局所化理論の共同研究を継続した. これに関し, 相対 Bott-Chern コホモロジーの理論をほぼ満足な形で完成させた. これは多くの重要な応用を持つが, その一つとして Hermitian 特異葉層構造の留数理論を展開し基本的な例を与えた. これらは論文に纏められた. 3. 関数の概念を大幅に拡張する佐藤超関数は局所コホモロジーを用いて定義されるが, 実際に用いるには具体的に表す必要がある. 研究代表者は相対 Dolbeault コホモロジーを用いると極めて簡明に表せることを見出し, この理論を発展させている.
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