研究課題/領域番号 |
24540063
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
井ノ口 順一 山形大学, 理学部, 教授 (40309886)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 曲面 / 曲線 / 3次元球面 / ループ群 / スピン幾何 / 接触幾何 / ハイゼンベルグ群 / 佐々木空間形 |
研究概要 |
1、本研究課題の主要目的のひとつである「3次元球面内のガウス曲率Kが一定で、0<K<1をみたす曲面」のループ群論による構成法について、David Brander氏、小林真平氏との共同研究により、以下の成果を得た。 (1)3次元球面内のガウス曲率Kが1未満である曲面に対し、3次元球面のもつリー群構造を用いて定義される法ガウスを用いて、「法ガウス写像のローレンツ調和性とKの定値性が同値である」という特徴づけ(ルー・ヴィルムス型定理)を与えた。(2)「ルー・ヴィルムス型定理」を用いて、3次元球面内のガウス曲率Kが一定で0<K<1である曲面とK<0である曲面を同時に与えるループ群論的構成法を与えることに成功した。 2、実績1で報告した研究成果においては、3次元球面が、リー群の構造をもつことが、重要な役割を演じている。定曲率でない3次元リーマン等質空間内の曲面に対するループ群論的構成法はこれまでに得られていない。Josef Dorfmeister氏、 小林真平氏との共同研究により、スピン幾何学・接触幾何学を組み合わせることで、3次元冪零リー群(ハイゼンベルグ群)内の極小曲面に対するループ群論的構成法を与えることに成功した。 3、ハイゼンベルグ群、3次元球面はともに等質接触多様体(佐々木空間形)の標準的な例である。実績1、2の成果の他の3次元空間への応用可能性を探るため、3次元佐々木空間形内の特徴的な曲線の研究を行った。Ji-Eun Lee氏と共同研究を行い、3次元佐々木空間形を含む3次元等質概接触リーマン空間内の概接触曲線で標準的アフィン接続(田中・Webster接続)に関し重調和条件をみたす曲線を分類した(論文[2],[3]として発表)。また2次元球面・双曲平面内の重極小曲線(biminimal curve)を分類し楕円関数を用いた表示式を与えた(論文[1]として発表)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24年度は「3次元球面内のガウス曲率Kが一定で0<K<1をみたす曲面」および「3次元ハイゼンベルグ群の極小曲面」に対するループ群論的構成法(一般化されたDPW法)の確立に向けて、基礎理論の整備を目標としてきた。3次元球面については、適切なガウス写像の概念を導入し、ガウス曲率の定値性を「ガウス写像の調和性」に結びつける「ルー・ヴィルムス型定理」の確立が出発点になる。この「ルー・ヴィルムス型定理」を研究期間内に定式化し証明することに成功した。その成果により、ループ群論的構成法を与えることに成功したため、「3次元球面内のガウス曲率Kが一定で0<K<1をみたす曲面に対するループ群論的構成法」については、順調に研究が進展したと評価できる。 「3次元ハイゼンベルグ群の極小曲面」については、ハイゼンベルグ群が定曲率空間でないため、曲面の構造方程式とループ群論との関係が、明確ではなかった。以前の研究成果で「極小曲面の法ガウス写像は双曲平面に値をもつ調和写像を与える」という事実を得ていたが、ハイゼンベルグ群内の曲面と双曲平面に値をもつ調和写像の間に直接的な関係がない。関連する研究(Berdinski氏・Taimanov氏)に着想を得て、曲面のスピン構造とハイゼンベルグ群の接触構造を利用して、曲面の構造方程式と「双曲平面に値をもつ調和写像」をループ群論を用いて結びつけることができた。その成果により、「3次元ハイゼンベルグ群の極小曲面に対するループ群論的構成法」を与えることができ、順調に研究が進展したと評価できる。 これら主目的に加え、関連する研究成果(曲線)も得られたため、総合的に「おおむね順調」と評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
1、今年度の成果である「3次元球面内のガウス曲率Kが一定で0<K<1をみたす曲面に対するループ群論的構成法」に立脚し、3次元双曲空間内のガウス曲率曲面に対するループ群論的構成法の確立可能性についての基礎的な研究を行う。球面の場合と同様に「ルー・ヴルムス型定理」の確立を目指す。 2、今年度に得たループ群論的構成法を用いて新たな曲面を構成する研究に着手するため、3次元球面、3次元双曲空間、3次元ハイゼンベルグ群内の「対称性の高い曲面」または「単純なクラスの曲面を変換(ドレッシング)して得られる例」の構成を行う。他の等質リーマン空間内の曲面への応用可能性も併せて検討する。 3、今年度得た2種類の「ループ群論的構成法」の証明方法・証明の過程で得た研究成果を再検討し、他の幾何学的問題(射影微分幾何・等積アフィン幾何など)への応用を考察する。3次元等質リーマン多様体内の曲線・曲面を接触構造・シンプレクティック構造・スピン構造の観点から検討する。 研究の進展・競合する海外の研究者の研究成果・研究動向に応じて、研究順序の変更などの適時修正を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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