特異曲面の研究を行っている。研究の方法は、距離2乗関数、高さ関数に特異曲面の径数付けを代入して得られる写像の特異点を解析するのが、主たるアイデアである。この研究手法では3次元ユークリッドの曲面という古典的微分幾何学の対象と特異点論を結びつけ、新たな幾何的問題意識や観点を導入するという点で極めて重要である。重み付き錐面について、この視点から調べたものが 2013年度に World Scientific から出版された Topics on Real and Complex Singularities の中に収められている。特異点での曲率線の漸近的振る舞いや、平行曲面に現れる特異点の判定法などが調べられている。副産物として主曲率が有界なブロー解析的関数であるような曲面を構成することができた。 また、ホイットニーの傘上の高さ関数の特異点を調べた論文が今年度に出版されたRIMS kokyutoku Bessatsu 38 に掲載された。この文脈ではホイットニーの傘と平面との接触を考えていることになるが、ホイットニーの傘と平面との交点として現れる特異曲線の特異点の判定を考えるのは自然である。本論文では、この交点の曲線の特異点は、高さ関数の特異点とホイットニーの傘の2重点軌跡と平面との接触で記述されることを示した。 最近では、非特異曲面と円柱との接触を調べている。この場合、円柱の定義式に非特異曲面の径数付を代入して調べることになるが、A5特異点、D5特異点というより退化した特異点が現れる等、球面の場合の単純な類似とは言えない部分があり興味深い。これは現在進行形で計算中である。
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