研究課題/領域番号 |
24540068
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
合田 洋 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60266913)
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キーワード | ホモロジーシリンダー / 写像類群 |
研究概要 |
ホモロジカリーファイバー結び目のうち,特に2橋結び目になるものについて考察を進めた.これらの結び目のモノドロミー写像の写像類がどのような表示を持つかについて,昨年度までの研究で曲面の基本群の生成元を用いた表示方法に注目し,それらを求めるアルゴリズムを得て5月の研究会で発表した.すると,生成元の取り方に関わる先行研究論文をご教示頂けた.その表示に従って再度計算を行うと,明示的な公式を得ることが出来た.さらにそれを用いてこれまでに得られていた公式とは異なるアレキサンダー多項式の公式を得ることが出来た.これを得るためにコンピュータ計算に明るい研究者の力をお借りし,コンピュータ実験を繰り返しながら公式の表示を推測し最終的には2橋結び目の種数に関する帰納法で証明することが出来た.そして,上記公式を使ったコンピュータ計算により,最小交点数12までのホモロジカリー2橋結び目のモノドロミーを具体的に与え,その表を作成することが出来た.この内容は「Monodromy maps of fibered 2-bridge knots as elements in Automorphism of free groups」というタイトルのプレプリントにまとめている. 8月にニューヨークのコロンビア大学で行われた国際研究集会「Geometric Topology in New York」に参加し,当該分野の研究の最新情報を収集した.また奈良女子大学でホモロジ-シリンダーに関わる研究を行っている方がおられることを聞き当大学に出向き研究の情報交換,および意見交換を行った.これらの出張では,これまでの自分のとは違う見地からホモロジ-シリンダーやその上での不変量を考察する研究に関する情報を得ることが出来た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
モノドロミー写像の写像類を求めるのに,独自に設定した曲面の基本群の生成元に無意識のうちに固執してしまい,研究会にて指摘を頂くまでより適切な生成元に気付かなかった.さらにそこからアレキサンダー多項式の公式を導く際の帰納法による証明が想定したものよりも複雑で時間を要した. 全体を通して,当初想定したよりもホモロジ-シリンダーおよびホモロジカリーファイバー結び目は豊富であり,その構造も複雑であることが徐々に判明してきた.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続きファイバー結び目に関する未知の事柄についてはこのまま調査研究を進める.全体的に研究が遅れているので焦ってどれも中途半端な結果にならないよう,まずはホモロジ-シリンダー上の様々な不変量のうちライデマイスタートーション,特にねじれアレキサンダー不変量に焦点をしぼり喫緊の先行研究の内容について勉強する.現在の研究推進の障害となっているもののうちの一つはパスカルの三角形と呼ばれるものに関する知見である.パスカルの三角形という概念そのものは歴史のあるものだけに,得たい知見が数学の長い歴史の中のどこかにある可能性が高いと感じている.現在の情報検索技術や近辺の数学者の協力をもらいそれを発掘したい.一方,最新研究情報においては,当研究は厳密に言って3つの分野:写像類群に関する研究分野,有限型不変量に関する研究分野,結び目理論に関する研究分野,にまたがっているので,これらの各研究グループの研究集会に出来る限り参加する.
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