研究初期の段階で,ホモロジカリーファイバー結び目は最初に想像したよりもはるかに複雑で非常に多く存在することが明らかになってきた.そこでホモロジカリーファイバー結び目のうち,特に2橋結び目になるものに焦点をあて,まずそのモノドロミー写像の写像類の表示の明示的な公式を得た.そしてそれを用いて,これまでに得られていた公式とは異なるアレキサンダー多項式の公式を得た.さらにモノドロミーに関するこの公式を使ったコンピュータ計算により,最小交点数12までのホモロジカリー2橋結び目のモノドロミーを具体的にあたえ,その表を作成することが出来た.この内容を「Monodromy maps of fibered 2-bridge knots as elements in Automorphism of free groups」というタイトルの論文にまとめた. さらに,ホモロジーシリンダーのライデマイスタートーションと体積を比較するために簡単な例の計算を行った.基本群の2次特殊線形群への表現を一般次数の表現に拡張する必要があり,その一般的な表示が得られないか独自に研究を進める一方,専門家の集まるいくつかのセミナーにてそこまでに得られていた計算結果及び研究結果を発表しレヴューを受けた.研究過程において,特にファイバー2橋結び目の補空間については,上述の研究において得られたモノドロミー表示が有効ではないかと試行錯誤を繰り返したが,満足する結果は得られず,次年度以降の研究に持ち越しとなった.また,一般的,抽象的な議論・証明の為には,微分形式,特に複素微分形式に関わる知識が必要な事が判明し,当該分野の専門書を購入し勉強した.
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