研究課題/領域番号 |
24540069
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
山ノ井 克俊 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (40335295)
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キーワード | 高次元ネヴァンリンナ理論 |
研究概要 |
25年度は,アーベル多様体の部分多様体が一般型である場合に,その部分多様体が擬小林双曲的であるか,という問題を研究した。アルバネーゼ次元が最大であるような一般型代数多様体が擬小林双曲的であることを証明したい、というのが本研究課題の一つの目標である。昨年度までに行った研究を踏まえて,25年度はこの目標に向かって一つ前進したことになる。未だ完全な証明にはたどり着いていないが,一方でどのような研究の方向性が有力であるか,ということについてはかなりのことが明らかになった。すなわち,アーベル多様体の部分多様体が部分アーベル多様体の平行移動を含まなければ小林双曲的である,というグリーンの定理に対して,我々の状況に拡張可能な別証明をつけて,それを発展させる,という方針をとっているが,この目的にかなうと思われるグリーンの定理の別証明を発見し,アーベル多様体の部分多様体が2次元である場合には,実際それが拡張可能であることを確認した。現在はこの方針を一般次元の場合に拡張する研究を行っている。25年度には,その他にも幾何学的対数微分の補題とよばれる,当該分野においてきわめて重要な評価式の別証明を発見した。すなわち,従来はネヴァンリンナの対数微分の補題といわれる一変数関数論の結果を用いなくては,幾何学的対数微分の補題は証明できないと思われていたが,実際には代数多様体の分岐被覆を用いることで純幾何学的な証明が可能であることを見出した。このような別証明は,当該分野の幾何学的な理解を深める意味で意義があると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アルバネーゼ次元が最大であるような一般型代数多様体が擬小林双曲的であることを研究する上での最大の難関は,ネヴァンリンナの第一主要定理を適用するときに生じる初期値問題である。この問題は25年度に行ったアーベル多様体の部分多様体の場合にも生じる問題であり,それゆえ現在直面している状況を完全に打開する方策が確立すれば,研究が一気に進展する可能性があると考えている。まとまった結果としては完成していないが,研究の方向性は固まってきており,本研究計画はおおむね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
一般型なアーベル多様体の部分多様体が2次元であれば,擬小林双曲的であることは証明できたので,その方針で高次元の場合に取り組む。その際の論点は,ある種のベクトル場の特異点解消であり,2次元の場合はそれが単純であり,高次元の場合は複雑であることがこれまでに達成できたことと出来ていないことを分けている壁である。この壁を壊すことを目指す。
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