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2014 年度 実施状況報告書

複素多様体の一意化、双曲性、およびネヴァンリンナ理論の研究

研究課題

研究課題/領域番号 24540069
研究機関東京工業大学

研究代表者

山ノ井 克俊  東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (40335295)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2017-03-31
キーワードネヴァンリンナ理論 / 小林双曲性 / 特殊集合
研究実績の概要

2014年度の研究成果としては主に以下の二つが挙げられる。1.高次元ネヴァンリンナ理論の研究は本研究課題の重要な柱である。高次元ネヴァンリンナ理論の研究において重要になる道具として、幾何学的対数微分の補題とよばれるものがあり、筆者もその確立に関わっている。この幾何学的対数微分の補題に対して、従来は1920年代にネヴァンリンナによって証明された古典的な有理型関数の対数微分の補題を用いた証明しか知られていなかった。今回、一般の射影多様体に対する幾何学的対数微分の補題を、多様体の分岐被覆のトリックを用いることによって、古典的なネヴァンリンナの対数微分の補題を用いることなく証明することに成功した。これは特に、古典的なネヴァンリンナの対数微分の補題に対しても、分岐被覆のトリックによって別証明をつけることが出来ることを意味しており、この手法の今後の応用も期待されるものであり、意義深いと考えられる。2.本研究課題では複素射影多様体の普遍被覆と小林双曲性の関連に注目している。本課題の研究計画にも挙げた、基本群が大きな線形表現をもつ射影多様体の研究に関して、以下のような成果を挙げた。すなわち、シュタイン多様体の線形群による商としてあらわれる射影多様体が小林双曲的であるのは、その商多様体の特殊集合が空集合である場合に限ることを証明した。特殊集合は、アーベル多様体からの非自明な有理写像の像をすべて含む最小の代数的集合としてLangによって導入されたもので、数論のディオファントス問題とも関連して興味を持たれているものである。今回の成果は特殊集合の振る舞いに関するLangの予想を部分的に裏付けるものである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2014年度の研究実績概要に記したように、高次元ネヴァンリンナ理論に対する理解は確実に深まっている。また、本研究課題の大きな研究対象である、シュタイン多様体の線形群による商としてあらわれる射影多様体の小林双曲性を特殊集合という代数幾何的な対象によって特徴付けることにも成功した。その意味でおおむね順調に進展しているといえるだろう。ただ、新しく得た高次元ネヴァンリンナ理論に対する理解がどの程度の応用を生み出しえるか、不明な部分も多く、それは2015年度以降の課題として残されている。

今後の研究の推進方策

現在までの達成度において述べたように、おおむね順調に研究計画は進展しているので、今後も現在の推進方策を引き継いでいく予定である。特に今年度は、アーベル多様体の部分多様体が一般型である場合には、その部分多様体は小林擬双曲的であること、およびアーベル多様体から豊富因子を除いた空間は小林双曲的であること、の証明を試みる。本研究計画の目標を達成するためには、これまで整正則曲線に関して研究されていたことを、小林擬距離の言葉で理解しなおすことが重要になる。それに向けた研究を現在開始しつつあり、その方策を今後も推進したい。

次年度使用額が生じた理由

2014年度は、東京工業大学から大阪大学への所属機関の移動が決まったため、その準備のため、出張計画に変更を余儀なくされた。そのため、64,112円の繰越金が生じた。

次年度使用額の使用計画

昨年度に生じた繰越金64,112円は、国内旅費として使用予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Kobayashi Hyperbolicity and Higher-dimensional Nevanlinna Theory2015

    • 著者名/発表者名
      K. Yamanoi
    • 雑誌名

      Progress in Mathematics

      巻: 308 ページ: 209-273

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] A generalization of a completeness lemma in minimal surface theory2014

    • 著者名/発表者名
      Y. Okuyama and K. Yamanoi
    • 雑誌名

      Kodai Mathematical Journal

      巻: 37 ページ: 506-517

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] Nevanlinna theory for holomorphic curves into algebraic varieties of maximal albanese2014

    • 著者名/発表者名
      K. Yamanoi
    • 学会等名
      Perspectives of Modern Complex Analysis
    • 発表場所
      Bedlewo, ポーランド
    • 年月日
      2014-07-21
    • 招待講演

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公開日: 2016-05-27  

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