研究課題/領域番号 |
24540084
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小林 治 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10153595)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | スカラー曲率 / 山辺不変量 / シュヴァルツ微分 |
研究概要 |
山辺不変量の決定問題は容易でない.この問題の解決に向けて,1980年代から1990年代のゲージ理論,特に,サイバーグ・ウィッテン理論とそのスカラー曲率への応用にについて,集中的にその理論の習得に努めた.成果には至ってないが,着実な準備ができたと考えている.2次元球面とそれ自身の直積の山辺不変量を求める事が研究代表者にとっては最も興味引かれる問題であるが,話はそう簡単でない.問題の困難さはある程度絞り込めたが,スピン幾何の限界を超える問題である事を恐れる. シュヴァルツ微分に関する曲線の単射性定理については,論文を作成し現在投稿中である.共形構造を持つ空間上の正則曲線にはシュヴァルツ微分を用いて 1次元射影構造が定義できる.この射影構造に関してその展開写像が単射であれば,曲線自身が自己交点を持たない,と言う性質を単射性性質と言う.ユークリッド球面は単射性性質を持つ事を和田昌昭との共同研究で1990年代に示した.ところがコンパクトなリーマン多様体でこの性質を持つ空間を調べると意外に少ない.コンパクト階数 1対称空間で調べた結果,球面だけがこの性質を持つ事が分かった.コンパクト階数 1対称空間に限らずとも成立つ,すなわち一種の球面定理ができるのではないかと期待される. 山辺の問題についての解説書が,数学会メモアールから出版される見込みである.約5年程前から執筆が始まったが,芥川和雄氏,井関裕靖氏との共同執筆であるため,調整に時間がかかり,ようやくほぼ完成する事ができた.現在,査読中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書には平成24年度の目標として,ゲージ理論に関する1980年代の数学を再検討しその研究手法を学ぶ事を主目的としたが,この目的に関しては十分達成できた.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の達成状況を基に,さらにスカラー曲率に関する,ここ20から30年の重要な研究結果を習得するよう努める.閉曲面上の閉曲線の正則ホモトピー不変量の共形幾何的表現について,なるべく早く結果をまとめ,論文を公表したい.
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次年度の研究費の使用計画 |
ほぼ平成24年度と同様.研究連絡,研究打ち合わせなどのために研究旅費を用いる. 幾何学,幾何解析関係の専門書を購入し数学図書室に配置してもらう. 若干の IT 機器を購入し研究環境の向上に資する.
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