平成26年度の成果は,ラゲールの球面幾何を用いて,曲線の共形不変な長さの概念を得た事にある.研究代表者の導入したシュヴァルツ微分にも関係がある.基本となるアイデアは,メビウス空間の曲線をドジッター空間の曲線に変換する事にある.メビウス空間での共形不変性がドジッター空間での等長不変性に転換する事が要点である.しかしメビウス空間での閉曲線が,この変換によりドジッター空間の閉曲線に移るとは限らないようである(証明も反証も今後の課題)事が事態を複雑にしていて,理論の完成にはまだ時間がかかる.それでも対数螺旋や,もっとも基本的な正円の,新しい特徴づけができるなど,手応えはある.またメビウス空間に限らず,一般の共形多様体で理論構築が可能である.この研究は共形構造の微分幾何という研究課題名に沿った内容であるが,ラゲール幾何学に関連する事からも推察されるように,内容的には時代遅れの印象を与えるかも知れない.それは扱っている対象が曲線である事が一因と考えられる.現段階では曲線論であるが,高次元化の構想もある程度できている.1980年代のブライアントによるウィルモア双対性の理論も,この理論に吸収される見込みである. 本研究の主要課題である山辺不変量の決定問題は,これといった進展はなかった.重くなるが,幾何解析を避けていては物事が進まないようである.一方,この山辺不変量問題に関連する最近の論文には目を通しているので,現時点における全般的な研究進捗状況は把握している. アファイン接続のリッチ曲率の問題については,平成26年度の期間においてはまったく手に付かなかった.
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