研究課題/領域番号 |
24540092
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
辻 元 上智大学, 理工学部, 教授 (30172000)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際研究交流 / ケーラー多様体 / ケーラー・アインシュタイン計量 / ベルグマン核 / 多重劣調和関数 / ケーラー・リッチ流 / 複素多様体 |
研究概要 |
ケーラー・リッチ流についてSebastien Boucksomとの共同研究を行った。族が射影的な場合には、標準束が擬正という条件の下で、長時間カレント解が存在することを証明し、さらに、ベルグマン核の対数多重列調和性を用いて、解の半正値正について、証明を行った。これを用いて、多重種数の変形不変性が得られる。 一方、さらに一般に、コンパクトケーラー多様体のケーラー族についても、同じリッチ流の研究をおこない、半正値性の保存則について、研究し、解の滑らかさの仮定の下で証明した。現在はさらにそれを推し進めて、解が特異性を持つ場合にも半正値性が保存されるのか、研究中である。 最近、Hoering-Peternellによる3次元コンパクトケーラー多様体上の極小モデル理論が研究されているが、これとの関係を研究中である。 また、2007年に発見した、コンパクトケーラー多様体上の標準的な体積形式について、その射影族上の変形について考察し、対数的多重劣調和性を証明した。証明は、半正値計量の、ベルグマン核による近似定理を用いる。この体積形式は、複素ユークリッド空間の有界領域の場合でも新しい概念であり、今後の研究が期待されるところである。この対数的多重劣調和性定理がケーラー族にまで拡張できると、大沢ー竹腰タイプのL^2拡張定理をケーラー多様体の場合に拡張できれば、ケーラー族の上の多重種数の変形不変性が得られることになる。 また、複素ユークリッド空間内の強擬凸領域について、ベルグマン核のイテレーションを研究し、これが、適当な正規化の下に、ケーラーアインシュタイン体積形式に平均収束することを証明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
パリ第6大学のSebastien Boucksom氏との共同研究は、順調に進展しており、様々な知見が得られつつあります。世界的にもケーラー・リッチ流の研究は盛んに行われており、複素モンジュアンペール方程式の特異解の構成にも、粘性解やエネルギー法などの新しい方法によるアプローチが試みられ、かなりの成功を納めています。本研究も、Vincent Guedj, Ahmed Zariahi, Mihai Paun, J.P. Demailly, P. Eyssidieuxなどフランスの研究者の刺激を受けて進展しており、これらの研究者との協力関係を構築することで、さらなる発展が望めるように思われます。
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今後の研究の推進方策 |
Sebastien Boucksom氏との共同研究については、結果自体はまとまっていますので、今後、論文の執筆を共同で行うことになります。 取り敢えずはそれが目標ですが、そのあとの研究は、ケーラー多様体のケーラー族に対する研究を行うことが、求められるところです。 コンパクトケーラー多様体の研究は、実際のところ、あまりまとまった研究は存在せず。 古典的なホッジ分解の他には、最近、ようやくケーラー錐について、モンジュアンペール方程式や、正則モース不等式のアナロジーが研究され始めたという段階で、未知の領域が広がっています。 ケーラーリッチ流の研究においては、その半正値性の保存という不思議な現象が、Boucksomと私の共同研究で確認されているわけですが、これを擬正錐の中の解の動きと捉えて、さらなる拡張が考えられるわけです。ここで問題になるのは、ベルグマン核の類似物がアプリオリには存在しないことです。 これを何らかの方法で乗り切る必要があります。 これを、今後の目標としたいと思います。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度研究は、カナダ、モントリオールに於ける研究集会、Extremal metrics in Kaheler Geometryに参加すること、Sebastien Boucksomを7月に招へい氏、共同研究をさらに進めることを予定しています。 それ以降の予定については未定ですが、コンパクトケーラー多様体上のカレントの代数的近似についてフランス、ToulouseのPopovici氏を招へいし、共同研究することも考えていますが時期は未定です。 いずれにしても、この科研費の大部分は、国際研究交流に使うことになると思います。
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