研究課題/領域番号 |
24540092
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
辻 元 上智大学, 理工学部, 教授 (30172000)
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キーワード | ケーラー・リッチ流 / 極値的体積形式 / ベルグマン核 / 標準測度 / 半正値性 |
研究概要 |
射影代数多様体上のケーラーリッチ流を、ベルグマン核のイテレーションで、近似し、その極限として実現することを行いました。これは、バリのS.Boucksomとの共同研究です。その結果、ケーラーリッチ流が、射影代数多様体の射影族の上では、曲率の半正値性を保つことが、分かりました。 これと並行して、代表者は、コンパクトケーラー多様体上で、ベルグマン核に代わる、新たな極値的体積形式を導入し、比較的緩やかな条件下で、その体積形式のイテレーションにより、標準測度を実現することに成功しました。これは、ケーラーリッチ流の離散版とも言えるもので、特に射影多様体の場合は、ベルグマン核のイテレーションとの関係を付けることに成功しました。 その結果、コンパクトケーラー多様体のケーラー族について、射影多様体の射影族と同様の半正値性が成り立つことを証明することが、次なる目標として見えてきました。目下のところ、射影族の極限として、族が実現されている場合には、半正値性が証明できていますが、それより一般的な場合には、まだどういったアプローチが可能なのか、模索中です。とはいえ、極値的な体積形式は、何らかの半正値性を持つことは、代表者及び、Berndtssonらの研究により最近明らかになりつつあり、極値的体積形式のイテレーションが、ある種の標準測度を定めることから、その極限が、数学的に意味のあるものであることは、明らかです。これが何であるのか、その研究を始めており、その結果も遠からず出てくるものと考えています。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
決定的な結果ではないものの、多くの知見が集積されつつあり、分野全体としても、活発に研究が進行していると思います。特に、コンパクトケーラー多様体上に、ベルグマン核の類似物が定義できたことは大きな進歩だと思います。
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今後の研究の推進方策 |
上に述べた、極値的体積形式のイテレーションについて、その半正値性を証明すること。また、その極限が良い性質を持つことを証明したいと思います。そのために、自ら研究を進めると共に、共同研究者であるS. Boucksomらとの研究連絡を行いたいと思います。特に、今年は韓国で国際数学者会議が開かれるため、そのサテライトコンフェレンスで講演したり、研究連絡を取り合ったりするつもりです。また8月にはOberwolfachのワークショップに招待されており、そこでの研究連絡、研究発表を行うつもりです。
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次年度の研究費の使用計画 |
共同研究者のS.Boucksomを、東京に招いて共同研究を行う予定であったが、先方の都合で、来られなかったのと、代表者も、研究室の引っ越しのために、東京を離れることが難しかったため。 S. Boucksomとの共同研究推進のために、旅費として使いたいと思います。
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