研究課題/領域番号 |
24540093
|
研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
高倉 樹 中央大学, 理工学部, 准教授 (30268974)
|
研究分担者 |
三好 重明 中央大学, 理工学部, 教授 (60166212)
|
キーワード | シンプレクティック商 / 余随伴軌道 / 旗多様体 / ベクトル分割関数 / 超幾何関数 / ウェイト多様体 |
研究概要 |
コンパクト単純リー群の余随伴軌道すなわち旗多様体の族から、直積やシンプレクティック商などの操作により定まる空間の不変量について研究を行った。この空間の座標環は、既約表現の族からテンソル積や不変部分空間をとることにより得られるため、関連して表現論や組合せ論の問題も派生する。特に、ベクトル分割関数や、その連続版であるベクトル体積関数が重要な対象となる。 昨年度までに重み付きベクトル分割関数・体積関数に対する一般的な公式が得られていたが、A型ルート系の場合(かつ定義域が「良い小部屋」の場合)に、それらを精密化した新たな表示が得られた。これは問題となっているベクトル分割関数・体積関数を、ある凸体上の格子点にわたる和として表すものであり、Baldoni-Vergne の結果と密接に関わる。さらに、正整数を指数パラメータにもつGelfand-Kapranov-Zelevinsky超幾何方程式系の解の表示にも応用される。これが今年度の第一の成果である。 第二に、ベクトル分割関数・体積関数に関する上記の結果を、A型の多重ウェイト多様体のトポロジーの研究に応用した。まず、この多様体が射影空間束の塔として表されることが幾何学的な考察からわかる。そこで、ベクトル体積関数がコホモロジー交叉積の母関数に一致することを用いて、射影空間束の捩れ具合を調べた。特に、その束の塔が直積とは異なることを示した。 なお、第一、第二の結果を、第60回トポロジーシンポジウム、研究集会「Knots, Manifolds and Group Actions」, 第40回変換群論シンポジウムにおいて発表した。 この他に、研究分担者三好は、結び目を平面への沈めこみの逆像として実現する構成についての研究成果を、東北結び目セミナー2013で発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画欄に具体的な問題・目標としてとして挙げていたものの内、いくつかに進展があった。すなわち、「(1) 余随伴軌道に付随するシンプレクティック商の不変量の計算と同形類の考察」については、昨年度得られた3次ユニタリ群に対する二重ウェイト多様体のトポロジーに関する結果を一般化して、高次ユニタリ群に対する多重ウェイト多様体に対する成果が得られた。 また、「(2) (1)の過程に現れる表現論的・組合せ的構造の考察」については、A型ルート系に対するベクトル分割関数および体積関数(ただし定義域が「良い小部屋」の場合)の帰納的な構造を導くことができた。 一方、(3)各種のシンプレクティック商におけるラグランジュ部分多様体の構成については、いまだに目立った進展が得られていない。今後の課題としたい。
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度までの成果を踏まえつつ、「現在までの達成度」に記した具体的な問題・目標(1)(2)(3)について研究を継続する。研究組織内の分担も前年度の通りとする。 現時点における重要な検討項目として、「多重ウェイト多様体のトポロジーの情報をベクトル分割関数・体積関数から可能な限り復元すること」「重複度多様体におけるラグランジュ部分多様体の構成」等を想定している。 同時に、文献・資料や情報の収集を継続して行い、検討項目を随時見直す予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
実支出額の累計に端数が生じたため。 翌年度の助成金の一部と合わせて、文房具等の購入に使用する予定である。
|