本研究では,これまで古田幹雄氏(東京大学)と藤田玄氏(日本女子大学)と共同で研究してきたWittenによる作用素の摂動のアイディアに基づく解析的手法による開多様体上の Dirac 型作用素に対する指数理論(以下,局所指数の理論)について,次の3点について研究を行ってきた. 1.これまでの理論に於いて,局所指数がそれを定義するために用いた付加的な構造にどの程度依存するのかを明確にし,局所指数の計算方法をさぐること. 2.局所指数のK理論などを用いた定式化 3.局所指数の幾何学的な性質を明らかにし,種々の応用をさぐること. これまでの研究では,互いに反交換子が非負であるような作用素の族を用いてDirac型作用素を摂動することにより局所指数を定義し,理論を展開してきた.この作用素の族の反交換子の非負性条件は局所指数がwell-definedであるための十分条件であるが,応用を図る上で非常に扱いづらい条件である.そこで今年度は,この条件を扱いやすい条件に置き換えることができないか,いくつかの具体例について曲率の評価の観点から考察を行った.また,他分野への応用として,局所指数の理論のトポロジカル絶縁体のバルクエッジ対応への応用を探るべく研究打ち合わせを行い,専門知識の提供を受けた.
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