研究課題/領域番号 |
24540096
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
廣瀬 進 東京理科大学, 理工学部, 准教授 (10264144)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 低次元トポロジー / 写像類群 / リーマン面 / 向き付け不可能閉曲面 / トレリ群 / ジョンソン準同型 |
研究概要 |
閉曲面上の写像類群の level 2 部分群,すなわちZ2係数の1次ホモロジー群への作用が自明なもののなす部分群,の生成系やアーベル化について考察した.詳細は以下の通り. 1)向き付け可能閉曲面上の level 2 部分群の有限生成系についての研究:この群が Dehn twist の2乗により生成される事が Humphries によって示されているが,具体的な有限生成系は知られていなかった.まず,代表者の以前のスピン写像類群に関する研究における考察をもとに,D. Johnson によるトレリ群やシンプレクティック群の level 2主合同部分群の生成系に関する研究を援用する事で,具体的に有限生成系を求めた.但し,その生成系の個数は種数に関して指数的に増大する物である.現在,さらに生成系の個数を減らす研究が進行中である. 2)向き付け不可能閉曲面上の level 2 部分群の有限生成系についての研究(佐藤正寿氏(岐阜大学)との共同研究):この群が Y-同相写像と呼ばれる写像たちによって生成される事と,その具体的な有限生成系についての Szepietowski の結果と modulo 2 Johnson準同型を用いる事で,この群のアーベル化を求めた.さらに,向き付け不可能曲面上の写像類群におけるある種の chain relation を用いる事により,Szepietowski の生成系よりも少ない生成系で生成出来る事,その個数がちょうどアーベル化の rank と一致しているため,それ以上生成系を減らす事が出来ない事が明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の理由より,研究は概ね順調に進展していると判断した. 1)4次元多様体内の写像類群の研究において,level 2 部分群について理解する事は不可欠である.この群についての今年度の研究において,mod 2 Johnson 準同型に関する知見を得る事が出来,これにより,表記の研究に関する今までに無い発展が期待できる様になったこと. 2)4次元多様体内の写像類群の研究に関連して,7月に参加した昆明の研究集会への報告書をまとめる事によって今までの研究内容や研究の方向性について再考する機会を得て,いくつかの考えるべき重要な新たな問題,例えば,4次元球面以外の単連結で微分可能な4次元多様体は常に flexible な曲面を許容するか等,を提起する事が出来,以降の研究に新たな方向性を示す事が出来たこと. 3)3次元ハンドル体の写像類群の表示についての考察を行い,さらに,3次元ハンドル体内に proper に埋め込まれた円板のなす複体への写像類群の作用を元にした同変ホモロジーの計算方法について佐藤正寿氏(岐阜大学)との共同研究をもとに新たな知見が得られたこと.
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究で得られた知見を元に,4次元多様体内の曲面の写像類群や3次元ハンドル体の写像類群の研究を引き続き行う.具体的には例えば以下の研究を行う. 1)単連結な4次元可微分多様体内における flexible 曲面の構成:もしも 11/8 予想が正しければ単連結な4次元多様体は複素射影平面,2つの球面の直積,K3曲面やそれらに逆の向きを入れたものの連結和と同相である事がしられている.一方,それらの4次元多様体が flexible な曲面を許容することが,安原晃氏(東京学芸大学)との共同研究により示されている.さらに,エキゾチックな4次元多様体は4次元多様体に埋め込まれた cork と呼ばれるものに沿った手術によって構成される事が知られている.そこで,4次元多様体内へのある種の2次元複体の埋め込みと cork との位置関係を考察する事により,標記の研究を行う. 2)曲面上の周期的写像の4次元球面への拡張可能性:3次元球面内に埋め込まれた曲面上の周期的写像の拡張可能性について低い種数から順に Wang 氏を中心とするグループにより研究が進展している.4次元球面への曲面の埋め込みについても同様の研究を進展させる.すなわち,周期的写像について,まずそのホモロジーへの作用を考察する事でスピン構造への作用を明らかにし,even スピン構造を保つ写像について実際に4次元球面上の周期的写像でその写像の拡張となっているものを構成や存在可能性について議論する.
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次年度の研究費の使用計画 |
1)東京理科大学で行うトポロジーセミナーのための最先端の研究者を招聘する.. 2)年度末に行う研究集会の為の講演者の招聘旅費や会場の借用代金として使用する. 3)写像類群や結び目理論を中心とする位相幾何学の諸分野について最新の成果を学び,研究成果を発表する為の他大学・研究機関(国外を含む)へ出張,特に,向き付け不可能曲面の写像類群の研究を進展させる為のポーランド出張を行う. 4)写像類群や結び目理論を中心とする位相幾何学の諸分野について研究打ち合わせを行うために,国内外の研究者を招聘する.. 5)写像類群や結び目理論の研究を進展させる為の最新のソフトウェアーを利用する為の最新の電子計算機を購入する.
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