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2013 年度 実施状況報告書

曲面結び目と3次元ハンドル体の写像類群の研究

研究課題

研究課題/領域番号 24540096
研究機関東京理科大学

研究代表者

廣瀬 進  東京理科大学, 理工学部, 准教授 (10264144)

キーワード低次元トポロジー / 写像類群 / リーマン面 / 向き付け不可能閉曲面 / 3次元ハンドル体 / トレリ群 / 擬アノソフ同相写像 / Morse-Smale 流
研究概要

写像類群や力学系に関して主として次の研究を行った:
1)向き付け不可能閉曲面のトレリ群の生成系(小林竜馬氏(東京理科大学)との共同研究): 閉曲面の写像類群の部分群で閉曲面の整係数1次ホモロジーへの作用が自明である物をトレリ群と呼ぶ.向き付け可能閉曲面のトレリ群については Johnson による有限生成系をはじめとする多くの研究がなされているが,向き付け不可能閉曲面のトレリ群については余りよく知られていない.そこで,小林竜馬氏が今年度 curve complex と非常に類似した高次の連結性を持つ複体を利用することで求めた GL(n,Z) の level 2 主合同部分群の表示を用いることにより,向き付け不可能閉曲面のトレリ群がどのような元により生成されるかを明らかにした.
2)超楕円的ハンドル体群の擬アノソフ元についての研究(金英子氏(大阪大学)との共同研究):3次元ハンドル体の写像類群の元のうち超楕円的対合と可換なもののなす部分群(超楕円的ハンドル体群)を考え,そこに金英子氏や高沢光彦氏(東京工業大学)によるエントロピーの小さい組みひもの系列に関する研究と類似した議論を適用することにより, 超楕円的ハンドル体群内の擬アノソフ元の系列として種数の増大に応じて急激にエントロピーの減少する系列を構成することができた.
3)3次元球面上のMorse-Smale 流の閉軌道についての研究(石川昌治氏(東北大学),亀井聡氏(東京工科大学),下川航也氏(埼玉大学),高井駿一氏(埼玉大学との共同研究):3次元球面上のある種の条件を満たす特異点をもつ Morse-Smale 流の閉軌道としてどのような結び目が現れるかについて研究を行った.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

以下の理由より,研究は概ね順調に進展していると判断した.
1)昨年度行った向き付け不可能曲面の level 2 写像類群に関連して,向き付け不可能曲面のトレリ群の生成系を知ることは非常に重要かつ自然な問題であったが,今年度,有限ではないものの生成系を求めることができたことは,向き付け不可能曲面の写像類群の研究についての非常に重要な進展となることが期待できること.
2)4次元多様体内の写像類群の研究に関連して,第60回トポロジーシンポジュームでの講演の機会を得たことを通じて,この研究に関して今までに得られた結果を見直し,新たな知見や問題意識を得ることができたこと.
3)3次元ハンドル体の写像類群が,その境界となっている曲面の写像類群のコホモロジー的な意味で余次元0の部分群であることが以前から知られているが,今年度の3次元ハンドル体の写像類群の中に多数の擬アノソフ元を構成することを目標とした超楕円的な部分群の考察を通じ,3次元ハンドル体の写像類群が,力学的な意味においても曲面の写像類群の中に密に分布した部分群であるとが明らかになってきたこと.

今後の研究の推進方策

今年度の研究で得られた知見を元に,位相幾何学的な観点からの写像類群の研究を引き続き行う.具体的には例えば以下の研究を行う.
1)向き付け不可能閉曲面上のトレリ群の有限生成系の存在やアーベル化についての研究: 向き付け可能閉曲面上のトレリ群については Dennis Johnson により有限生成系が具体的に求められている.今年度の研究で求めた向き付け不可能閉曲面のトレリ群の生成系は有限個ではなかったので,さらに研究を進めることにより有限生成系の存在について明らかにし,また,向き付け不可能閉曲面上のトレリ群からの Johnson 準同型を考察することによりアーベル化を求める.
2)超楕円的3次元ハンドル体群の表示などについての研究:向き付け可能閉曲面の超楕円的な写像類群については,超楕円的対合による2重分岐被覆を用いた議論により Birman と Hilden が具体的に表示を求めている.今後の研究では,同様の議論を超楕円的3次元ハンドル体群について適用することにより,この群の表示を求めて,それを元に3次元ハンドル体群の Wajnryb による表示をより明快なものに書き直す試みを行う.
3)3次元球面上の特異点のある Morse-Smale 流の閉軌道の研究:3次元球面内の任意の結び目に対して,それを閉軌道とする特異点のある Morse-Smale 流が存在することが知られている.与えられた結び目に対してそれを閉軌道とする Morse-Smale 流としてどれ程簡単なものがとれるか,たとえば,どれ程特異点を減らすことができるかなどを明らかにする.

次年度の研究費の使用計画

以下の3点から,次年度使用額が生じた.
1)今年度末に行う研究集会への研究者の招聘費用を確保していたが,他の研究費などからの補助が得られたため,実際の支出が少なかったこと.2)計算機購入のための物品費を確保していたが,来年度に販売される新機種を購入することとしたこと.3)来年度には今年度より多くの研究者を招聘したり,韓国での国際数学者会議のため出張をする予定があるために,多くの金額が必要になったこと.
1)東京理科大学で行うトポロジーセミナーのための最先端の研究を行っている研究者を招聘する.2)写像類群や結び目理論を中心とする位相幾何学の諸分野について最新の成果を学び,研究成果を発表する為の他大学・研究機関(国外を含む)へ出張,特に,向き付け不可能曲面の写像類群の研究を進展させる為にポーランド等へ出張を行う.3)写像類群や結び目理論を中心とする位相幾何学の諸分野について研究打ち合わせを行うために,国内外の研究者を招聘する.4)写像類群や結び目理論の研究を進展させる為の最新のソフトウェアーを利用する為の最新の電子計算機を購入する.

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 5件)

  • [雑誌論文] Degree of roots of disk twists on 3-dimensional handlebodies2013

    • 著者名/発表者名
      Susumu Hirose, Naoyuki Monden
    • 雑誌名

      Geometriae Dedicata

      巻: 164 ページ: 73-82

    • DOI

      10.1007/s10711-012-9759-4

    • 査読あり
  • [学会発表] 4次元空間内の曲面と写像類群2014

    • 著者名/発表者名
      廣瀬 進
    • 学会等名
      研究集会「Topology mini workshop」
    • 発表場所
      日本大学文理学部
    • 年月日
      20140320-20140320
  • [学会発表] 向き付け不可能閉曲面のトレリ群の生成系について2014

    • 著者名/発表者名
      廣瀬 進
    • 学会等名
      研究集会「Hurwitz action~ひねる代数~」
    • 発表場所
      草津セミナーハウス
    • 年月日
      20140126-20140126
    • 招待講演
  • [学会発表] 4次元空間内の曲面の変形と写像類群2013

    • 著者名/発表者名
      廣瀬 進
    • 学会等名
      トポロジー金曜セミナー
    • 発表場所
      九州大学 伊都キャンパス
    • 年月日
      20131213-20131213
    • 招待講演
  • [学会発表] The mod 2 Johnson homomorphism and the abelianization of the level 2 mapping class group of a non-orientable surface2013

    • 著者名/発表者名
      佐藤正寿,廣瀬進
    • 学会等名
      研究集会「リーマン面に関連する位相幾何学」
    • 発表場所
      東京大学大学院数理科学研究科
    • 年月日
      20130826-20130826
    • 招待講演
  • [学会発表] 4次元多様体内の曲面の変形と写像類群2013

    • 著者名/発表者名
      廣瀬 進
    • 学会等名
      第60回トポロジーシンポジウム
    • 発表場所
      大阪市立大学
    • 年月日
      20130806-20130806
    • 招待講演
  • [学会発表] The mod 2 Johnson homomorphism and the abelianization of the level 2 mapping class group of a non-orientable surface2013

    • 著者名/発表者名
      Susumu Hirose, Masatoshi Sato
    • 学会等名
      Workshop: Johnson homomorphisms
    • 発表場所
      東京大学大学院数理科学研究科
    • 年月日
      20130605-20130605
    • 招待講演

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公開日: 2015-05-28  

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