写像類群に関連して,主として次の研究を行った: 1)写像類群の部分集合における擬アノソフ元の拡大度に関する研究(金英子氏(大阪大学)との共同研究):前年度まで,超楕円的ハンドル体群の擬アノソフ元の拡大度の最小値の種数に関する漸近的挙動について考察を行ったが,さらに,以下の写像類群の部分群や部分集合に関して同様の考察を行った:(1)3次元球面の Heegaard 曲面を保つ部分群の内,超楕円的対合と可換であるもののなす部分群(2)スピン構造を保つ部分群(3)3次元多様体の2重分岐被覆として現れる円周上の曲面束のモノドロミーとなる写像類の集合. 2)超楕円的ハンドル体群及び関連する群の基本群やホモロジー群への作用に関する研究:ハンドル体及びその境界となっている閉曲面の1次元ホモロジー群を係数とする超楕円的3次元ハンドル体群の1次元ホモロジー群の予備的な計算を行った.さらに,超楕円的ハンドル体群と密接な関係にある Hilden群の自由群への自然な作用の表示について考察し,さらに,その作用が自明である部分群の生成系について考察を行った. 3)境界付き曲面の周期的写像の位相的剛性についての研究(Gromadzki氏(グダンスク大)Szepietowski氏(グダンスク大)との共同研究):向きづけ可能な閉曲面上の周期的写像について,十分大きな位数をもつ写像のある種の一意性が,Kulkarni ,笠原氏等により示されているが,境界付き曲面(向きづけ不可能でも良い)についても同様の現象が成り立つかを考察し,周期が十分大きい場合に,同じ周期を持つ周期的写像の同値類の個数を明らかにした.
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