研究課題/領域番号 |
24540097
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
吉岡 朗 東京理科大学, 理学部, 教授 (40200935)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 複素解析 / 変形量子化 / 非可換幾何学 / シンプレクティック・ポアソン幾何学 / 力学的幾何 |
研究概要 |
研究計画に従い2点の研究を行った。第一に、変形量子化を用いてアイゼンシュタイン級数の拡張に関する研究を行った。アンドレ・ヴエイユの著書でアイゼンシュタイン級数について記述されているが,それらを一つ一つ変形量子化により拡張する作業を行っている。著書の前半で説明されている三角関数の級数表示の拡張に成功した。変形量子化を用いることにより、アンドレ・ヴエイユの与えた分数式の無限和による方法がそのまま直接的に拡張できることが分かった。第二に、磁場のかかった水素原子のエネルギー固有値とその重複度の研究を行い予定通り結果に到達した。変形量子化により運動量写像を用いて古典的な簡約化と並行に議論を進めることが可能であると判明した。 研究計画に従い下記の研究会を開催し、本研究計画に関係する国内外の研究者の参加により、情報交換・研究打ち合わせを行った。ブルガリア科学アカデミーのムラデノフ教授と共同で国際研究集会を開催し、本研究計画に関係する古典力学の可解性について研究している多くの参加者たちと情報交換と研究打ち合わせを行った。進行中の本研究計画の研究結果について報告し、その際の質疑応答を通して多くの参加者から有益な情報を得ることが出来た。ポーランドにあるビアリストク大学数学科のオズジェビッチ教授主催の国際研究会に参画し、計画に従い非可換幾何学、数理物理学の専門家と合同で、現在世界で進行中の研究の流れを幾何学の側面から統一的に眺める作業を行った。ここでも本研究計画の研究結果について報告し、その際の質疑応答を通して多くの参加者から有益な情報を得ることが出来た。早稲田大学の本間准教授,慶雁義塾大学の宮崎教授と共同で幾何学の研究集会を開催し、国内の関連する研究者を広く招聴し分野横断的に情報の交換,研究討論を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主な目的は、変形量子化の完備位相代数を用いて,(1)指数関数などの初等関数,テータ関数,楕円関数,そして特殊関数の非可換化を調べること,(2)これらの満たす非可換関数等式について幾何学的な視点で研究すること,(3)これらの関数等式を具体的な量子系に応用することの3点である. 現在までに、(1)に関しては、アイゼンシュタイン級数を変形量子化による拡張研究を行い、数学的に意味のある定義を与えることが出来、研究の方向性が見えてきてその基礎的部分に関して結果が得られたといえる。(2)に関しては、具体例を通じて研究を行っている。具体例をみると、非可換な指数関数が分岐特異点を持つことがわかり、この特異点の周りを点が一周した時の値のずれを調べている。非可換指数関数の特異点に関しては、一般的な幾何学的研究を行うためには、その前に多くの具体例を調べる必要がある。(3)に関しては、磁場のかかった水素原子の一つのモデルであるMIC-Kepler 問題の変形量子化による研究を行った。量子系のエネルギー固有値、その重複度を正確に求めることが出来た。調和振動子、水素原子など今までに知られている変形量子化の応用研究に対して新たに一つ、応用例を加えることが出来た。 研究計画に従い、本研究計画に関連する研究集会を開催し、関係する国内外の研究者と交流、情報交換などを行った。予定通り、ブルガリアでは国際研究集会を主催し、ポーランドでは国際研究集会を開催委員として参画、早稲田大学本間准教授、慶應義塾大学宮崎教授と協力し研究会を開催した。 以上のように、平成25年度の研究実施計画に従い、ほぼ予定通りの研究を実施できたといえる。また、全体の研究計画に従い、予定通り、研究を実施できているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の主な目的は、変形量子化の完備位相代数を用いて(1)指数関数などの初等関数、テータ関数、楕円関数そして特殊関数の非可換化を調べること(2)これらの満たす非可換関数等式について幾何学的な視点で研究すること(3)これらの関数等式を具体的な量子系に応用することの3点である。(1)に関しては、今年に引き続きアイゼンシュタイン級数の変形量子化による拡張の研究を進める。現在までに、三角関数の級数表示が定義できた。今後は、この新しく定義された関数が満たす関数等式を研究する。(2)に関しては、非可換2次式の指数関数の持つ特異点について、引き続き詳しく研究してゆく。これまでに、いくつかの例に対して具体的な結果が得られた。これを引き続き研究していく。得られた結果をもとに、更に一般的な場合について例を拡張していく予定である。(3)に関しては、引き続き磁場のかかった水素原子に関する研究を行う。今までの研究では、3次元の問題を詳しく調べた。この場合、対称性の群が可換な1次元コンパクトリー群であった。これを高次元で対称性の群がSU(2)であるような拡張、すなわちSU(2)-Kepler問題の場合に変形量子化の適用を研究する予定である。今までに得られた知見をもとに、この具体例を詳しく調べる計画である。特に、対称性の群が非可換である具体例は、今までに調べられていないので意味があると考えられる。また、(1)(2)(3)をそれぞれ具体的に研究する場合、完全積分可能系についての研究が重要であることがわかってきた。今後は、完全積分可能系の計算も導入して研究していく予定である。 これらを同時に平行させながら研究を続ける計画である。また、今後も引き続き、国際研究会、国内研究会を開催し、国内外の研究者と連絡を密に取り合い、情報交換などを行い研究推進していく予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度も今年度と同様に、ブルガリアで本研究計画に関係する国際研究集会を主催し、また、ポーランドで本研究計画と関連のある国際研究会に開催委員として参画する予定である。それらの研究会において海外の研究者と情報交換、研究打ち合わせ等を行い研究を推進する。それらに参加するための出張旅費として研究費を使用する予定である。また、海外から研究者を招聘し、研究打ち合わせと専門知識の提供を受ける予定である。そのための出張旅費、謝金として使用する。国内で研究会を行い、本研究計画と関連のある国内の研究者に講演を依頼し、情報交換と研究打ち合わせを行う。そのための旅費に科研費を使用する予定である。これらの研究会に加え、適宜、関連する国内の研究者を招聘し、セミナーなどを開催し研究打ち合わせ、専門知識の提供などに対する旅費、謝金などにも使用する予定である。 これら研究会等から得た情報を整理し研究資料を収集するためのアルバイト料などの謝金にも使用する予定である。また、得られた結果を発表するための費用、論文別刷費などが必要となるがこれらに使用する。その他、連絡のために郵便料金、印刷費などに使用する。 研究計画を推進するための計算用にPC環境を整える必要があり、PC部品、ソフトウェア購入などの消耗品費、PC環境整備保持のためのアルバイト料の謝金が必要となる。これらのために使用する予定である。
|