研究課題/領域番号 |
24540098
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
小野 肇 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (70467033)
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キーワード | チャウ安定性 / 偏極トーリック多様体 / ケーラー・アインシュタイン計量 |
研究概要 |
本研究の1つの目的は、ケーラー錐の幾何および佐々木多様体の幾何の観点に立った研究により、ケーラー幾何における主要問題の1つであるYau-Tian-Donaldson予想の解決をめざすことである。 しかしながら、最近、TianやChen-Donaldson-Sunらによって、ケーラー・アインシュタイン多様体の場合、つまり、反標準偏極の場合に予想が解決された。その他の偏極の場合にはいまだに未解決であり、その解決に向けて、多くの研究が進んでいるが、佐々木多様体の幾何の観点は、ケーラー・アインシュタインではない一般のケースではその独自性を発揮するには、現段階では、多少難点がある。 そこで、平成25年度は、当初考えていた方向とは別の観点から、ケーラー・アインシュタイン計量や佐々木・アインシュタイン計量の存在問題を扱った。具体的には、次の事実を証明した:反標準偏極トーリック多様体において、トーリックケーラー・アインシュタイン計量の存在問題は、モーメント像上のモンジュ・アンペール方程式の解の存在問題に帰着される。一方、以前、複素射影空間のトーラス軌道のハミルトン安定性を証明しており、その際、より一般の反標準偏極トーリック多様体においても、アインシュタイン性(つまり、モンジュ・アンペール方程式の解)がトーラス軌道のハミルトン安定性を導くのではないかと予想した。しかし、フビニ・スタディ計量や、平坦計量を変形した、複素トーラス上のトーラス不変ケーラー・アインシュタイン計量の中には、すべてのトーラス軌道がハミルトン不安定となるものがある。したがって、一般に、モンジュ・アンペール方程式の解から、トーラス軌道のハミルトン安定性が導かれることはない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、本年度は佐々木多様体に付随した「無理数次数付き」環と微分幾何的な量との関連について研究し、佐々木多様体に関する適切な安定性概念を提案し、標準的な佐々木計量の存在問題との関連について調べる予定であった。 しかしながら、Yau-Tian-Donaldson予想の部分的な解決を受け、ケーラー・アインシュタイン、および、佐々木・アインシュタイン計量の存在問題を別の観点から調べる手段として、ラグランジュトーラスのハミルトン安定性を選び、その手法ではうまくいかないことを解明できた。
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今後の研究の推進方策 |
ケーラー・アインシュタイン多様体における、ラグランジュ部分多様体のハミルトン安定性やハミルトン体積最小性について未解決な問題が多い。また、それらについてはYau-Tian-Donaldson予想の類似が存在するとも予想されている。そこで、今までの研究をもとに、ラグランジュ部分多様体のハミルトン体積最小性、およびそれらの「幾何学的不変式論の意味での安定性」に対応する概念について研究する。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は、当初予定より出張回数が少なく当該研究費が生じた。 次年度は、研究集会出席に使用する旅費に加え、共同研究者との研究打ち合わせを予定しており、その旅費として支出を予定している。
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