ハードソフト系の知恵の輪問題の解法について位相幾何学(トポロジー)の観点から研究した。ハードソフト系の知恵の輪とは、金属などで出来た変形しない部分と、十分な長さを持つ紐や輪ゴムなどからなる変形可能な部分からなる知恵の輪のことである。ハードソフト系の知恵の輪問題とは、初期状態(多くの場合、変形しない部分に変形可能な部分が絡まっていてはずれない状態を意味する。)から完成状態(多くの場合、変形しない部分から変形可能な部分が外れている状態を意味する。)へ変形可能であることを示す問題である。さらに、初期状態から完成状態への変形に対して必要な「手順の数」というものが定義されている場合には、初期状態から完成状態への変形に必要な手順の最小数を求めることも問題となる。今回、この手順の最少数を、結び目理論における結び目解消数や絡み目解消数の概念の類似として、以下のように定義した。変形しない部分と変形可能な部分のそれぞれについて3次元空間内で強変形レトラクトとなる1次元複体をとり、さらに変形しない部分に対応する1次元複体に適当に辺を追加して空間グラフを作る。この追加した辺は仮想的な辺であり、この辺と変形可能な部分に対応する1次元複体の辺との交差交換によって初期状態に対応する空間グラフから完成状態に対応する空間グラフへの変形が可能となる。その際に必要な交差交換の最少数を手順の最少数として定義した。この手順の最少数を、いくつかの典型的なハードソフト系の知恵の輪について、被覆空間についての初等的な議論を用いて決定した。
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