研究課題/領域番号 |
24540103
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
松浦 望 福岡大学, 理学部, 助教 (00389339)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 差分幾何 / 離散可積分系 |
研究概要 |
可積分系と関わる微分幾何に現れるさまざまな対象は、離散化によってその本質的構造を明らかにすることが可能であろうと期待されており、そうした研究領域は差分幾何(離散微分幾何)と呼ばれ曲線と曲面の場合が活発に研究されている。本研究は曲線の差分幾何をテーマとし、とくに離散化された曲線の変形理論が興味の対象である。差分幾何では、離散可積分系理論を基盤にして変形の整合性を保証するため、離散化された曲線の運動を、半離散ソリトン方程式や離散ソリトン方程式の厳密解によって統制することが可能となる。本年度の研究成果は以下のとおりである。 (1) 曲線と曲面の差分幾何について、差分幾何の特徴や本質をもっともよく表していると考えられるいくつかの典型例をまとめ、その内容を幾何学シンポジウムなどの研究集会で講演し、また、概説論文を日本応用数理学会論文誌に発表した。とくに曲線の差分幾何については最新の研究成果を報告した。 (2) 変形コルテヴェーグ・ドフリース方程式によって定捩率な空間曲線の等周変形(伸び縮みのない変形)が記述できることは、ラムらの結果によってよく知られている。このことの半離散的類似として、離散化された定捩率空間曲線の連続的等周変形を井ノ口順一氏、梶原健司氏、太田泰広氏と共同で研究した。とくに半離散変形コルテヴェーグ・ドフリース方程式のタウ函数をもちいて、離散化された定捩率空間曲線の位置ベクトルを具体的に表示した。空間離散曲線の連続的変形を統制するという観点からは、アブロヴィッツ・ラディック階層に属する高次の半離散ソリトン方程式の厳密解を用いて同様の明示公式を与えることが今後の研究課題のひとつとなる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度の研究実施計画では、離散空間曲線の連続的変形のうちでとくにアブロヴィッツ・ラディック階層によって統制されるものを詳しく調べる予定であったが、階層全体についてはまだ研究が進展しておらず、階層の最低次の方程式に対してのみ詳細な構造を明らかにすることができた段階にあるため。
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今後の研究の推進方策 |
交付申請書に記した研究実施計画にもとづき、離散空間曲線の離散的変形のうちでとくに離散変形コルテヴェーグ・ドフリース方程式によって統制されるものを定式化することを目指す。研究が計画どおりに進まない場合には、離散空間曲線の連続的変形を階層の観点からより詳しく調べること、あるいは、離散負定曲率曲面のうち構造方程式が離散パンルヴェ方程式に簡約されるものをループ群論的手法によって詳しく調べること、などを考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は44479円である。これは、日本応用数理学会論文誌第23巻第1号(平成25年3月発行)に掲載した論文の別刷代金として、平成25年3月に使用することを見込んでいたが、別刷代金の請求書が平成25年4月になってから届いたため、やむなく平成25年度の研究費へ繰り越したものである。次年度使用額44479円は、平成25年度において、当該論文別刷代金としてその全額を使用する計画である。
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