研究課題/領域番号 |
24540103
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
松浦 望 福岡大学, 理学部, 助教 (00389339)
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キーワード | 差分幾何 / 離散可積分系 |
研究概要 |
空間離散曲線の離散的変形のうち、とくに離散modified KdV方程式および離散sine-Gordon方程式によって統制されるものを定式化した。空間離散曲線の離散的変形についての先行研究は、空間離散曲線の位置ベクトルそのものの離散時間発展を陽的に書き下すことができず、離散フルネ枠のレベルでの離散時間発展を記述するにとどまっている。そこで本年度の研究では、離散的捩率が定数であるような空間離散曲線に対して、その離散的捩率と離散的弧長をともに保つような離散時間発展(以下これを捩率保存等周変形と呼ぶことにする)を定式化し、しかもその離散時間発展を離散空間曲線の位置ベクトルそのものの変形として陽的に書き下した。これは先行研究において調べられた離散フルネ枠の離散的変形理論を一度「積分」したことに相当し、非自明な結果である。この「積分」によって明らかになったのは、捩率保存等周変形の整合性が離散modified KdV方程式および離散sine-Gordon方程式によって保証されること、また、離散時間発展の各ステップにおいて「離散modified KdV方程式による変形」か「離散sine-Gordon方程式による変形」かを自由に選択できることである。さらに、この捩率保存等周変形によって形成される離散曲面は、離散K曲面(負の定曲率曲面を離散化したもの)であることが分かった。すなわち我々の提示した捩率保存等周変形の公式は、離散K曲面の新しい構成方法ともなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画では、離散modified KdV方程式によって統制されるような空間離散曲線の捩率保存等周変形を定式化することが目標であったが、実際の研究成果ではそれを超えて、空間離散曲線の捩率保存等周変形が離散modified KdV方程式または離散sine-Gordon方程式によって記述されることを見いだし、さらに、離散K曲面の構成方法として今まで知られていなかった公式を提供できたため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究成果を基盤にして弾性体への応用を目指す。ただし、その研究がうまく進まない場合は、離散非線形シュレディンガー方程式によって記述される空間離散曲線の離散的変形について調べる。さらに、その研究もうまく進まない場合は、離散バーガース方程式によって記述される平面離散曲線の離散的変形について詳しく調べる。
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