研究課題/領域番号 |
24540104
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
濱田 龍義 福岡大学, 理学部, 助教 (90299537)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 幾何学 / 計算機代数 / オープンソースソフトウェア |
研究概要 |
以下の研究集会を主催し,計算代数の最近の成果についての情報収集と微分幾何学への応用について議論を行った. 1. 2012年7月4日--7月6日 RIMS共同研究「数式処理研究の新たな発展」, 京都大学数理解析研究所 2. 2012年9月17日 数学ソフトウェアとフリードキュメント/15, 九州大学病院キャンパス医学部百年記念講堂 3. 2013年3月19日 数学ソフトウェアとフリードキュメント/16, 京都大学吉田南総合館 RIMS共同研究「数式処理研究の新たな発展」においては GeoGebra の開発コミュニティから,Zsolt Lavitza(University of Cambridge), Balazs Koren(ELTE University) の2名を招き,動的幾何学ソフトウェアの最新事情についての情報交換を行った.また,2013年8月4日から,佐賀大学で行われた研究集会「部分多様体の微分幾何学及び関連課題」に参加し,部分多様体に関する最新の研究情報を得た.その成果は World Scientific 社より Proceedings として出版される予定である.同じく2012年8月には広島大学の田丸博士氏,星川祐次氏との共同研究成果が Journal of Geometry に掲載された.2012年11月には大韓数学教育学会において招待講演の機会を得た.この講演は動的幾何学ソフトウェアの研究,教育利用についてであるが,数学ソフトウェアの研究,教育利用の可能性について十分に伝えられたものと考えている.2013年3月には,幾何学,計算機代数,計算機科学等の複数の専門家の協力を得て,数学に関連するオープンソースソフトウェア環境 MathLibre 2013 を開発,公開した.配布を通して,新たな専門家と研究交流を行うことによって,今後の研究の進展が期待される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実超曲面の研究については,複素射影空間内のある種の対称テンソルに注目し,A型と呼ばれる等質実超曲面の新たな特徴づけを行った.A型超曲面は数ある等質実超曲面のなかでも,特に良い性質を備えているものであり,今後も引き続き研究を進める予定である.また,複素双曲空間内のリー実超曲面に関して広島大学の田丸博士氏,星川祐次氏と共同研究が Journal of Geometry に掲載された.今後は代数的な立場と部分多様体論の立場の両方の観点から,さらに研究を進める予定である. トポロジーと代数計算との連携については,龍谷大学の中川義行氏,東芝インフォメーションシステムズの横田博史氏と密接に連絡を取り合っている.本年度は新たに首都大学東京の今井淳氏と結び目のエネルギーに関する数値解析による評価を検討している. 離散的な幾何学については,現在,特殊な距離空間内の円錐曲線の一般化に取り組んでいる.この領域については,これまでにも様々な試みがあるが,動的幾何学ソフトウェアへの実装については,研究例もわずかであり,今後の研究の進展が望まれる. 初年度と言うこともあり,当初に予定していた全ての計画を実行することはできなかった.極小曲面論への代数的な方法や不等式に対する限量子消去法の適用などについては,未だ手付かずであり,今後,新たに研究領域を獲得するためにも,さらなる準備が必要と思われる.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,特に実超曲面の研究における代数的手法に興味をもっており,広島大学の田丸博士氏と今後も連携し,リー環論の立場からの探索をより一層進める予定である.複素双曲空間内のリー実超曲面は等質実超曲面としての性質も持っており,これまでにリー環論の立場から様々な幾何学的不変量についての検討を行なってきた.今後,さらに他の不変量についても検討を進める予定である.離散幾何学的な観点による,代数計算および数学ソフトウェアの研究への適用については,是非取り組みたいテーマの一つである.また,計算機代数と幾何学の産業利用,および教育利用についても研究を進め,各分野の専門家との連携を推進していく予定である.このような観点から,筑波大学照井章氏,金沢大学小原功任氏,東芝インフォメーションシステムズ横田博史氏,九州大学IMI横山俊一氏と共同で開催予定のワークショップについては,研究計画の中でも重要な位置を占める.国内外から様々な分野の専門家を招き,その知見を紹介していただく予定である. 現在,動的幾何学ソフトウェアのバックグラウンドとなるコンピューティング幾何学については,明治大学の阿原一志氏より情報提供を受けている.動的幾何学ソフトウェアの中には,定理自動証明や軌道計算の必要性から,計算機代数システムとの連携を試みる動きがある.このような連携システムの研究,産業利用にも興味をもっており,今後,さらに各分野の専門家との連携を進めていく予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度からの若干の繰越金については,予算執行上,2013年度における国際会議等への参加を検討した結果,計画的に行ったものである.幾つか検討されている国際会議のうち,現在,確定しているものとしては7月に韓国釜山で開催されるAMC2013への参加を予定している.AMC2013では数学ソフトウェアプロジェクト MathLibre の周知,および各分野の専門家との情報交換を予定している.特に,先日,ドイツの Oberwolfach 研究所から公開された数学ソフトウェアデータベース swmath.org は大きな注目を浴びているプロジェクトであり,今後の研究連携に向けて推進していきたい.合わせて,MathLibre の開発,および年2回の数学ソフトウェアに関するワークショップに関連して専門家による情報提供の依頼を予定しており,旅費の支給が必要となる.現在,神戸大学の野呂正行氏,高山信毅氏とは密接に連絡をとっているが,微分幾何学への代数計算の利用という観点から,今後も引き続き研究交流を予定しており,その意味でも研究連絡および情報収集のための旅費は重要な位置を占める予定である.
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