研究課題/領域番号 |
24540110
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
笠原 勇二 筑波大学, 数理物質系, 教授 (60108975)
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研究分担者 |
梁 松 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (60324399)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ベッセル過程 / スペクトル関数 / タウバー型定理 / 推移確率密度 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、1次元拡散過程について、スペクトル関数の漸近挙動を調べることである。この作用素は拡散過程に対応するので、拡散過程へ応用することが出来る。 1次元拡散過程においてはブラウン運動がもっとも基本的であるが、これに次いで重要なのはベッセル過程であり、様々な量が具体的に特殊関数を用いて計算されている。本研究では、それらを拡張して、漸近的にベッセル過程に近い場合、あるいは同じ事であるが、ベッセル過程を少し摂動させたときに、スペクトル関数がどのように変わるかを調べている。とくに、スペクトル関数の漸近挙動から拡散過程のドリフト係数の挙動を求めるタイプの逆問題に重点をおいている。 主要な結果は、スペクトル関数が正則変動するための条件は、基本的にはドリフト係数が漸近的にベッセルの場合に近いことであり、その厳密な表現は25年度までに得られたが、26年度に論文として仕上げることができ、投稿の結果、掲載が決まった。また、前年度までは半直線上で考えたが、26年度には両側の場合への拡張にも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
拡散過程の生成作用素にはコルモゴロフ式の古典的な表現と、フェラーの標準形が代表的であるが、前者は直観的に理解しやすくまた確率微分方程式の枠に納まり易く、また後者は逆問題などを扱うのに適している。ゆえに、漸近挙動を両者の形で表現したときの相互関係を求めることは重要である。本研究では各種極限定理に必要な両者の関係をほぼ完全に解決し、当初の目的をほぼ達成といえる。現在はさらにその発展と応用に取り組んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
スペクトル関数の漸近挙動に関する基本的な定理はすでに論文として仕上がり、掲載が決まっているが、そこで得られた結果や手法は応用が広いので、その方向に研究を発展させたい。とくに1次元拡散過程の first hitting time の末尾確率の計算に役に立つことに気がついたので、ベッセル過程について最近知られるようになった結果を、より一般の拡散過程に拡張するとともに、逆問題に取り組みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた海外出張を健康上の理由(腰痛)で取りやめたため。
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次年度使用額の使用計画 |
積極的に成果発表および研究交流をする予定であり、旅費に使用したい。
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