研究課題/領域番号 |
24540117
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
中本 敦浩 横浜国立大学, 環境情報研究院, 准教授 (20314445)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 多色彩色 / グラフ / 曲面 / 四角形分割 / 偶三角形分割 |
研究概要 |
3-正則平面2部グラフの多色彩色(各面にすべての色が表れる頂点彩色)に関する研究を皮切りに,グラフの局所変形を用いて,その結果を射影平面とトーラスに関して,拡張することを試みた.そのために,射影平面とトーラス上の3-正則偶角形分割の生成定理を作り,既約グラフの彩色可能性を証明した.同様の定理をクラインの壷に関して証明しようと考えているが,曲面の向き付け不可能性が障害となり,なかなかうまく論理を動かすことができていない.これについては,来年度以降の課題となりそうである. 一方,多色3-彩色可能な四角形分割を,射影平面に関して,特徴付けることに成功した.この証明は,結び目理論の手法を用いたものであり,たいへん興味深いものである.また,向き付け可能性によらず,曲面上の与えられた四角形分割が多色3-彩色可能であるための必要十分条件を,代数トポロジーの用語を用いて記述することに成功した. さらに,上述の文脈を少し緩和すると,「与えられた四角形分割を,辺の追加のみで,偶三角形分割に変形可能であるか」という問題へとつながる.(四角形分割が多色3-彩色可能であれば,その各四角形面に対角線を加えることにより,3-彩色可能な偶三角形分割に変形できることは明らかである.)この問題に対しても,代数的な条件により,その必要十分条件を与えることができた.平面グラフに関しては,20年余り前に同様の定理が得られていたが,それを拡張することに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初,平面グラフの定理をその他の曲面に拡張することを目標としていたが,多色染色数が低いグラフを特別に注目することにより,「偶三角形分割に辺の追加のみで変形できる四角形分割の構造」という新たな研究テーマが得られた.その問題について,代数トポロジー的なアプローチにより解決することができ,当初からは予想もしないような壮大な結果が得られた.
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今後の研究の推進方策 |
新たな研究―テーマに関するさらなる研究を深めつつも,当初予定していた「局所変形理論」の構築に取り組む.これができれば,グラフマイナー的な手法で得られた曲面上の偶三角形分割の染色数に関する一般論を,大雑把な評価ではなく,緻密な値により改良することができる.今後の位相幾何学的グラフ理論の方向性として,既存の定理の緻密化や簡素な証明の模索が挙げられ,本研究テーマもその方向性で進められると考えている.
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度は事情により,海外出張をする機会が少なくなってしまい,当初計画よりも研究費使用額が少なくなった.今年度は上述の新しい研究成果を講演するため,3つの国際研究集会に参加することを計画している.
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