研究課題/領域番号 |
24540117
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
中本 敦浩 横浜国立大学, 環境情報研究院, 准教授 (20314445)
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キーワード | 多色彩色 / グラフ / 曲面 |
研究概要 |
本研究では,曲面上のグラフの多色彩色に関する研究を行っている.その彩色は美術館問題の鮮やかな証明手法から派生したものであり,平面グラフの彩色へと自然に拡張される.本研究は,それを一般の曲面に拡張するとどのようになるかを考察したものである.曲面上のグラフの多色k-彩色とは,すべての面の境界上にすべてのk色が現れるk-彩色を考え,そのkの最大値を考察するものである.これは,与えられた曲面上のグラフの面をすべて見られる彩色頂点数の考察にも役に立つ. 前年度までの研究で,平面と射影平面上の3-正則偶角形分割が多色4-彩色であることを示してきたが,今年度はトーラスに関して同様の研究を行った.そのために,ある局所変形に関して,極小となるすべての3-正則偶角形分割を決定し,それらについて定理が成立することを確かめ,そこから帰納的に定理を証明した.それらの極小グラフは三角形分割のGrunbaum coloringなど,他の研究においても意味を持つものであり,たいへん有用なリストとなる.今後はそれと同様の方針で,クラインの壷上の3-正則偶角形分割に関する研究が期待されるが,場合分けが煩雑になる可能性があり,そこを効率化できるかどうかがポイントとなる.また,これまで,射影平面上のodd Mobius ladderのみが多色4-彩色をもたない反例であったが,向き付け不可能な曲面でさらに反例が見つかるかが興味深い. このように,単に1つの彩色の亜種を定義し,それに関する一考察を得るのではなく,グラフの多色彩色をキーワードに曲面上のグラフの様々な性質や分類等を行うのが本研究の目標である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
問題提起の段階では,グラフの多色彩色の研究動機と基本的な性質くらいしか明らかでなかったが,平成22,23年度の研究を通じて,特に3-正則偶角形分割の多色4-彩色性については,種数の低い曲面である程度,解決されてきた.また,クラインの壷についてどうなるかを考察することにより,さらに本研究を深めることができると考えている.さらに,平成23年度には,得られた結果をスロバキア,アメリカ,台湾で開催された国際研究集会で発表することができており,それらが論文等の業績に順調に結びついているからである.
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今後の研究の推進方策 |
私の研究の概要と現況に関しては上に述べたが,今後の研究として,次のことに取り組みたいと考えている.まず,最初に掲げた目標通り,曲面上のグラフの多色彩色に関する知見を蓄積する.次には,平面偶角形分割が辺の追加により偶三角形分割に変換され,結果的に多色3-彩色を持つことに着目し,一般の曲面の偶角形分割が辺の追加により偶三角形分割に拡張するかという問題を考えたい.その問題は,HofmannとKriegelによって,提起されたものであり,ZhangとHeがそれに関して部分的な解答を与えているに過ぎない.来年度には,曲面のホモロジーや線形代数を用いて,それに関する現象がある程度記述できることが判明したので,そういうアプローチにより,本問題に取り組む予定である.それにより,多色3-彩色や多色4-彩色を持つ曲面上の四角形分割が完全に特徴付けられるものと思われる.
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次年度の研究費の使用計画 |
天候不良により,国内出張の予定が少々変わったため,宿泊数等の関係で執行金額が減った. 上での金額を考慮に入れて,支出計画を立案する予定である.
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