研究実績の概要 |
研究の目的に述べたテーマのうち, (A)「強制公理を保存する半順序集合のクラスの研究」については, 平成28年度には, 海外誌に投稿していた下記の成果(1)についての論文について, 査読報告に基づいて証明の軽微な誤り等を修正して再投稿し, 採録決定に至った. 研究期間を通しての成果は次のようにまとめられる. (1)半順序集合の「作戦的閉性」と「*戦術的閉性」とはいずれも長さ(ω1+1)のバナッハ・マズアゲームにおいて後手が必勝法を持つという「(ω1+1)戦略的閉性」を強めた概念である. 以前の研究で, この二つのいずれかの性質を持つ半順序集合による強制はよく知られた強制公理の一つである固有強制公理(PFA)を保存することがわかっていたが, より強い強制公理, 例えばマーティンの極大公理(MM)の下では, 作戦的閉な半順序集合による強制で保存されるが*戦術的閉な半順序集合による強制では必ずしも保たれない命題や, その逆の性質を持つ命題が存在することがわかった. (2)*戦術的閉な半順序集合のクラスにマーティン型公理として対応する「集合型登攀可能性原理」(SCP-)と呼ぶ無限組合せ論の命題に対して, 自然な2種類の拡張(SCP-f, SCP-e)を導入し, SCP-f は *戦術的閉と作戦的閉な半順序集合のクラスに, また SCP-e は*戦術的閉を弱めた「**戦術的閉」な半順序集合のクラスに同様の対応関係を持つことなどを示した. (B)「位相空間の諸性質の強制法のもとでの保存についての研究」については, 平成28年度にはハウスドルフメタコンパクト空間でコーエン実数の付加によってメタコンパクト性を失う例の探索を行ったが, 発見には至らなかった. 研究期間を通しての成果としては, T1メタコンパクト空間でコーエン実数の付加によってメタコンパクト性を失う例の発見が挙げられる.
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