研究課題/領域番号 |
24540127
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
渡辺 雅二 岡山大学, その他の研究科, 教授 (30243546)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 微生物プロセス / 数学モデル / 逆問題 / 数値シミュレーション / ポリマー生分解 / 鳥インフルエンザ / 微分方程式 / 応用数学 |
研究実績の概要 |
平成26年度は,平成24年度と平成25年度に引き続き,ポリマー生分解評価の数理的解析法を確立させ,また鳥インフルエンザ抑制に向けた養鶏ファーム管理方法を提案するため,モデリング,解析,シミュレーションによる研究を行い,また得られた成果を研究集会での研究発表や論文として発表することを目標とした。また,ポリマー生分解や鳥インフルエンザで開発された数理的手法を他の微生物プロセスに対し適用することも視野においた。ポリマー生分解に関しては,平成25年度に引き続き,特に分解率の時間ファクターに重点を置いた。分解率は分子量ファクターと時間ファクターの積として表される。分子量ファクターは従来用いられてきた手法により求められる。分解率の時間ファクターには,溶存酸素量,温度,微生物個体数などがあるが,平成26年度は平成25年度に引き続き,特に微生物個体数に着目した。微生物の増殖率は,微生物個体数と微生物が利用可能な炭素源としてのポリマーに依存する。微生物個体数が平衡状態を維持するために要する単位個体数あたりの炭素量があり,微生物個体数は,単位個体数あたりの炭素源がこの炭素量より大きいとき増加し,単位個体数あたりの炭素源がこの炭素量より小さいとき減少すると想定した。また活性を失う微生物個体数の割合は一定であるとの仮定もおいた解析も行った。これらの前提のもと,ポリエチレングリコール(PEG)の生分解実験結果を分解率の分子量ファクターと時間ファクターの逆問題の解析に導入し,分解率時間ファクターを数値的に求める手法に関する考察を行った。分解率が得られた後に初期値問題を数値的に解くことによりポリエチレングリコールの重量(質量)分布推移に関するシミュレーションを行い,解析結果と実験結果を比較した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ポリマー生分解に関しては,分解率の時間ファクターを求めるため新たな手法を考案した。この手法では,残留ポリマーの質量の離散点における時系列を逆問題の解析に導入し,時間ファクターのパラメータを特定する。すなわち実測データから得られた残留ポリマーの離散点における時系列の質量と,それらに対応する解析結果の誤差を最小とするようなパラメータを特定する。この方法を用いた結果による数値シミュレーションを行い,その妥当性を検証した。
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今後の研究の推進方策 |
ポリマー生分解に関しては,時間ファクターのパラメータを求めるための数値的手法として各パラメータの区間を設定し,各区間を分割した結果得られた離散点における目的とする関数の評価により最適なパラメータの値を特定した。今後は時間ファクターのパラメータを求めるための数値的手法を改良することを目標とする。また,鳥インフルエンザ抑制に向けた養鶏ファーム管理方法の提案を目標とする数理的手法の開発に関しては,現時点で提案したモデルを改良し,ウィルス濃度に対し空間的変化を考慮に入れたモデルによる解析を目標とする。また,本研究で得られたモデリング,解析,シミュレーションに関する知見をもとに,他の微生物プロセスの数理的解析に取り組むことも目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
参加を計画したが都合により参加を取りやめとした研究集会があった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度には,研究成果を国内外の研究集会で発表し,また論文として投稿すること計画する。
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