研究実績の概要 |
カテゴリカルデータ解析において,いくつかの要因により非常に複雑に関係しあったデータを表現するためには多次元分割表を用いる必要がある。多次元分割表はセル数が非常に多くなるため1つのセル当たりのデータ数が稀となることが多い。このような場合に分析をおこなうと,検定統計量の正確な分布とその漸近分布であるカイ二乗分布との乖離が大きくなり,検定等の信頼性が疑わしくなる。本研究の目的は,一般の多次元分割表における種々の独立性検定において,検定統計量の帰無分布の漸近展開に基づき,標本数が少ない場合にもカイ二乗分布による近似が良い変換統計量を構築することによって,信頼性の高い方法を開発することである。その目的のために,M次元分割表における完全独立性検定統計量の分布の多変量エッジワース展開を導出し,それを用いて,中・小標本でも信頼度の高い変換統計量の構築をおこない,そのカイ二乗分布への近似の良さが変換前より優れていること,およびこの変換統計量の検出力が変換前の統計量とほぼ同じであることを数値実験により示し,完全独立性に関する成果を論文にまとめ,学術誌への投稿をおこなった。次に,3次元分割表における一要因対二要因に関する独立性検定統計量の分布の多変量エッジワース展開,改良変換統計量の構築および性能の評価をおこなった。この結果は論文にまとめられ学術誌に公表された。さらに,3次元分割表の条件付独立性検定統計量の分布の多変量エッジワース展開の導出をおこなった。28年度においては,導出された展開に基づき変換統計量の構築をおこない,カイ二乗分布への近似の良さがもとの統計量より優れていることを数値実験により示した。また,ログリニアモデルへの理論の拡張に関して,ロジスティック回帰モデルにおける検定統計量の研究の場合に用いた複合仮説検定のテクニックを使用することによって漸近展開を導出する方法論を確認できた。
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