研究課題/領域番号 |
24540135
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
内山 成憲 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (40433172)
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キーワード | 暗号 / アルゴリズム |
研究概要 |
今年度は昨年度に引き続き、代数的アルゴリズムの中でも有限体上定義された代数曲線上のペアリング計算についての計算とその応用及び特殊な形をした自然数の素数判定アルゴリズムについて解析を行った。具体的には、2007年にStangeにより提案されたElliptic Netと呼ばれるペアリングの計算に用いることが出来る写像の計算アルゴリズムの解析を行い、Fixed Argument pairingと呼ばれるものの計算において一つの高速化を与え、実装によりこれを確かめた。また、Edwards curveと呼ばれる楕円曲線の標準系に対するスカラー倍算の計算アルゴリズムについて解析を行い、一つの改良を与え実装によりこれを確かめた。さらに、Elliptic Netの基となる楕円曲線に付随した数列Elliptic Divisibility Sequenceを用いて、有限体上の楕円曲線上定義される離散対数問題と等価な数論的な問題がいくつか提案されていたが、Diffie-Hellman問題と呼ばれる関連する問題については考察されていなかったため、これについて考察し、Elliptic Divisibility Sequenceを用いた楕円Diffie-Hellman問題と計算量的に等価な問題を定義しその等価性を示した。さらに、Mersenne数と呼ばれる自然数の一般化の形をした自然数、その中でもWoodal数と呼ばれる自然数に対するRiselによる素数判定アルゴリズムを解析し一つの高速化を与えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
代数的アルゴリズムの暗号への応用を考えると、重要なものの中にペアリング暗号がある。ペアリング暗号の計算アルゴリズムに関しては既存のMillerによるアルゴリズムが有名でその高速化の研究は比較的歴史もあり多数提案されているが、新しい手法に関してはほとんど何も知られておらず、Elliptic Divisibility Sequence や Elliptic Net と呼ばれている数列や関数についての応用研究もほとんど進んでおらず、今回の成果、特にElliptic Divisibility Sequenceに基づく楕円Diffie-Hellman問題と等価な数論的な問題の提案等は、新しい暗号方式への応用の研究に発展する可能性もあると考え、理論的な観点のみならず実用的な観点からも重要な課題を提案していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き代数的アルゴリズムの中でも代数曲線に関連するアルゴリズムの研究を中心に行う。特にペアリング暗号関連の研究の中でもElliptic Divisibility SequenceやElliptic Netに基づくアルゴリズムの解析及びEdwards curveに代表される曲線の標準系の取り方に依存した演算の高速化の研究等を進める。一方、素数判定アルゴリズムや素因数分解アルゴリズム、離散対数アルゴリズムといった問題に関する研究も新しい暗号方式への応用も見据えて継続して行いたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
参加予定であった暗号に関する国際会議The 8th International Workshop on Security(IWSEC2013、2013年11月 那覇市)及び研究集会2014年暗号と情報セキュリティシンポジウム(SCIS2014、2014年1月 鹿児島市)に参加することが出来ず、そのための参加登録料や旅費を使わなかったため次年度使用額が生じた。 次年度は上記の予算を含め、以下の使用計画を考えている:計算量的に困難な代数的アルゴリズムの解析を進めるために専門家との議論及び情報収集が欠かせない。このため、国内出張を2回程度(10万円)及びアメリカ西海岸で開催される暗号の国際会議CRUPTO等への参加のための海外出張1回(30万円)の合計40万円程度が旅費としてかかると考える。また、計算機やソフトウエアの購入として25万円程度、代数学やアルゴリズム関連の専門書の購入のため5万円、合計30万円程度の物品費を予定している。さらに、プログラミングや数値実験を行うためにアルバイトの雇用や専門的知識の提供のために専門家の招聘などの謝金に30万円程度かかると考えている。また、国内会議や国際会議への参加のための参加登録料金等のために8万円を予定している。
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