今年度はElliptic Netと呼ばれる楕円曲線の新しい数論モデルに基づくペアリングの効率的な計算アルゴリズムの並列化について考察を行った。ペアリングに適した楕円曲線の暮らすとしてBN曲線と呼ばれるものがあるがそれらBN曲線上でOptimal Ate Pairing と呼ばれるペアリングを6次のtwist上のElliptic Netを用いて効率よく計算する方法について、ブロックサイズを拡張する方法などを用いて考察した。今回提案したアルゴリズムは10並列の場合が最適であり、単一のものと比較すると22%程度の高速化を与えることがわかった。また、楕円曲線上の秘密分散共有法についても考察を行った。これまでの方式が単一の秘密を分散するものであるが、今回複数の秘密を同時に扱えるMulti-Secret Sharingと呼ばれるものについて考察を行った。補間法もLagrangeによるものだけでなくHermiteによるものも用い複数の種類のものを提案した。これらは実装も行い、実用的なサイズにおける効果も確かめている。上記の結果はいずれも2015年9月に金沢大学で開催された日本応用数理学会2015年度年会、12月に首都大学東京で開催された第11回「代数学と計算」研究集会及び2016年1月に熊本市内で開催された暗号と情報セキュリティシンポジウム(SCIS2016)などで発表し、論文誌JSIAM Lettersにもその一部の結果は掲載されている。
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