研究概要 |
q 元体上の長さ n, 次元 k, 最小距離 d の線形符号([n,k,d]q 符号)が存在する限界(具体的には n の最小値 n_q(k,d) や d の最大値 d_q(n,k))を決定する問題は、符号理論において最も基本的な研究課題の一つであるが、(q,k) = (3,6), (4,5), (5,5), (7,4), (8,4) の場合でも多くの未解決問題が残っている。 本年度は、まず q=4, k=5 の場合に取り組み、d = 2 (mod 4) の 4元線形符号に関連して現れる射影空間 PG(r,4) の奇集合について調べ、r=4 のときの分類を得た。更に、その分類を応用して、4元線形符号に対する新しい拡張定理を証明した。この定理は、今後、4元線形符号の存在限界を求める研究において、活用されることが期待される。 また、q=8, k=4 の場合にも取り組み、線形符号の生成行列から得られる多重集合から、幾何学的な対象を削除することによって最適な符号を構成する Geometric Puncturing に関する新たな知見を得た。この手法は、特に符号の長さが大きな値の新しい符号を構成する際に有効であると考えられる。これらの成果は、ブルガリアで開催された国際会議 ACCT2012 や国内の研究集会等で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
4元線形符号の拡張可能性に関する成果を利用して、q=4, k=5 の場合の線形符号の存在限界を求める問題に取り組みたい。一方、有限幾何を利用した座標削除による符号の構成方法の有効性を調べるために、q=5, k=5 の場合の新しい符号の構成についても取り組みたい。 3元線形符号に対して有効であった手法を、より一般的な線形符号の研究に役立てるために、4元線形符号について更に深く調べたい。特に、最近得られた4元線形符号の拡張可能性に関する結果や有限幾何を利用した新しい符号の構成の多くは、更に一般化できる可能性があると考えられる。また、q が 9以下までの未解決な nq(k,d) 表を作成し、website で公開たい。
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