研究概要 |
q 元体上の長さ n, 次元 k, 最小距離 d の線形符号([n,k,d]q 符号)が存在する限界(具体的には n の最小値 n_q(k,d) や d の最大値 d_q(n,k))を決定する問題は、符号理論において最も基本的な研究課題の一つであるが、q と k が小さい値の場合でも多くの未解決問題が存在し、活発に研究されている。 本年度は、まず昨年度に引き続いて q=4 の場合に取り組み、4元線形符号に関連して現れる射影空間 PG(r,4) の奇集合の分類を応用して、d=1 (mod 4) のときの3重拡張可能性などに関する新たな拡張定理を得た。この結果は、n_4(5,d) の決定問題に関する研究に寄与することが期待される。また、n_5(5,d) の決定問題にも取り組み、Projective Dual や Geometric Puncturing といった幾何学的な手法を駆使して、新しい最適線形符号を構成することができた。これらの成果は、ブルガリアで開催された国際会議 OC2013 や国内の研究集会等で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
まず、新しく構成できた最適な5元線形符号について、その幾何学的な構造を分析し、最適な q 元線形符号の構成に一般化できないか考察したい。これは、Belov タイプではない最適線形符号の構成という極めて難しい問題を解決する端緒となる可能性を秘めている。新しい最適線形符号のコンピュータを用いた探索に関しては、ブルガリア科学アカデミーの Bouyukliev 教授に協力を仰ぐ予定である。また、Griesmer 符号の非存在を証明する上で重要な線形符号の拡張可能性に関する幾何学的な研究にも引き続き取り組みたい。できれば、n=4, k=5 の未解決問題にも挑戦したい。 未解決問題を含む低次元の nq(k,d) 表は website で公開しており、随時更新する予定である。
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