研究概要 |
まず,車両配送問題の多項式時間で解けるクラスについては,アルゴリズムに関する新しい結果を得ることができた.これまでに,n頂点のグラフに対し,閉路の数(定数)kを指定すると,重みの和最小のピラミッド型の経路がO(n^{2k})時間で得られるアルゴリズムを考案していた.この結果から,例えばStrong Demidenko条件をみたすグラフについては,多項式時間で車両配送問題の最適解が得られることが保証される.今年度,Monge性をみたすグラフに対し,車両配送問題の最適解がO(n)時間で求められることを示せた.これはkに依存しないという意味で,他の条件の場合よりも高速に最適解が得られることを表している. また,順列や集合の均等分割についても新しい結果を得ることができた.昨年度,集合{1,2,...,n}上の順列と自然数kが与えられたとき,必要なら2要素を交換することで,一方の部分列の和がkになるように2分割可能であることを示した.この系として,順列を和がほぼ均等になるように2分割できることがわかる.この結果の応用として,平面上のラベルつきn点配置に対する2つのパスによる被覆に関する定理も示せた.これらに続いて,01の数列に対するある種の均等2分割に関する結果が得られた.また,安藤ら(1990)は,集合{1,2,...,n}を和が均等になるように指定した個数の部分集合に分割できるための必要十分条件を得ていたが,今回,和が等差数列(等差は任意の自然数)になるように分割できるための十分条件を得ることができた.しかし,その後,公差を1に限定すれば,分割できるための必要十分条件を与える定理が既知であったことが判明している.これらの周辺の問題を継続して急いで考える必要があると思っている.
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