まず,順列の均等2分割に関する結果およびこの結果を用いて証明した離散幾何学に関する定理について,計2本の論文にまとめ,雑誌に投稿中である. 今年度は,中本,山下,渡辺三氏とともに,円順列で連続するk個の和の最大値と最小値の差の最小値の評価に関する結果を得た.連続するk個の和を一定にすることは一般に不可能であるが,その値のとりうる範囲がなるべく小さくなるような状況を考えることは,ほぼ均等な配置を考えることに対応する.k=2の場合は比較的容易に考察できるが,k=3の場合について完全な評価を与えた.これは円順列の要素数nの値により挙動が変わるものの,いずれの場合もこの値について評価し,最善である例を構成することができた. また,経路問題については,Monge性を緩和したある条件を仮定すると巡回セールスマン問題が多項式時間で解けることを示していたが,イギリスのウォーリック大学のデイネコ氏とともに,これを2部グラフ上で考える2部巡回セールスマン問題(The bipartite Traveling Salesman Problem)においても多項式時間で解けることを証明した.グラフが2部グラフに制約されることにより,証明が簡易になるというわけではなく,むしろTI-techniqueと呼ばれる手法で辺を選択する場合に注意が必要であることがわかった.また,van der Veen条件のアナロジーとなるある条件を仮定すると巡回セールスマン問題が多項式時間で解けることも証明した.上記いずれの条件に対しても,最適解がピラミッド型巡回路とは限らず,これを緩和した巡回路を導入する必要があった.この緩和が多項式時間で求解できる範囲で留められたことが特筆すべき点である.時間計算量のさらなる最小化については今後の課題である.
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