研究課題/領域番号 |
24540145
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
富澤 貞男 東京理科大学, 理工学部, 教授 (50188778)
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キーワード | 分割表解析 |
研究概要 |
本年度は,具体的に得られた研究成果は主として次の点が上げられる: (1)正方分割表解析において,2変量t分布型対称モデルを提案した.これまで2変量正規分布型対称モデルは著者が過去に提案したが,今回はそれとは異なるモデルである.提案したモデルは,潜在連続分布として2変量t分布が考えられる場合,切断点を設けて分割表を作成し,離散型分布にすると良く適合する.提案したモデルの有用性はシミュレーションで確かめ,非常に優れたモデルであることを示した.(2)正方分割表において,不完備対称モデルを提案した.また,提案したモデルの直交分解も与え,完全な対称モデルが成り立たないときにその原因を探るのに有用である.(3)正方分割表において対称性のモデルの3つのモデルへの分解を提案した.対称モデルが成り立つための必要十分条件は,累積2比パラメータ対称モデル,グローバル対称モデルと周辺平均一致モデルが成り立つことである,という定理を与えた.(4)対称性のモデルの分解において,また,適合度検定統計量に関しても直交するような分解も与えた.(5)正方分割表において対称性のモデルからの隔たりを測る尺度を提案した.これまでもいくつかの尺度は提案されていたが,今回はそれらとは異なり,Arimotoエントロピーを用いた新しい尺度である.(6)分割表解析は離散型多変量解析であるが,連続型多変量解析として,多変量確率密度関数に関しての点対称な確率密度関数を提案し,点対称確率密度関数の分解を与えた.なお,それらは一般論と具体的な確率密度関数,たとえば,正規分布,球状分布,楕円分布など,の両方に対して与えた これらの研究成果は,従来の推定法,検定法,モデル選択法などに加えて,モデルの提案と分解,尺度の提案,確率密度関数の種々の対称性と分解などに基づく新しい分割表解析法を提案しており,本研究は大きな貢献ををしている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の交付申請書に記載した研究目的は以下のように複数ある.順に自己点検をしてみる: (1)多元分割表解析において,種々の対称性や非対称性を述べるセル確率に関する一般的な対称性のモデルのクラス(GSと記す)を導入し,更に分割表の内部の確率構造に関する一般的な(たとえばオッズ比に基づく)準対称モデル(GQSと記す)と周辺確率に関する一 般的周辺対称モデル(GMと記す)のクラスを導入すること,特に「GSモデルが成り立つ必要十分条件は,GQSモデルとGMモデルの両方が同時に成り立つことである」という分解定理を考える;ということに関しては,大きなモデルのクラスを考えるというのは,ある関数ダイバージェンスを用いることである程度可能のようであり現在進行中であるが,一般的な従来型に関しては新しく提案でき,ある程度目的は達成できたと考えられる. (2)多元分割表で,一般的対称性,非対称性モデルからの隔たりを測る尺度とその分解を考える;に関しては新しい研究成果は得られ,ある程度目的は達成できたと考えられる. (3)多元分割表で,GSモデルのGQSモデルとGMモデルへの分解を導入する際,グラフィカルモデリングとの関係を考える;に関しては,まだ満足できる研究成果は得られていないが,現在進行中である. (4)多元分割表で,幾何学的アプローチから対称性のモデルの直交性を考える;に関しては,本研究で検定統計量の直交性に関する更なる研究成果を得ることが出来た.しかし,幾何学的観点からは満足できる研究成果はまだ得られていないが,現在進行中である.
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今後の研究の推進方策 |
本年度得られた研究をさらに発展させること,また,まだ十分研究成果が得られてないものについては目的達成に向けて取り組む予定である:具体的には, (1)2元あるいは多元分割表で種々の対称性(非対称性)に関するこれまでのモデルを含む一般的な対称モデルを引き続き考える. (2)一般的な対称モデルの分解を考える.特に関数を用いた対称性の考えを導入する. (3)モデルの直交性を考える.特に検定統計量や幾何学的なアプローチで考える. (4)多変量密度関数の対称性あるいは非対称性に関して,またその分解に関して引き続き取り組む.正規分布のみならず,それを一般化した楕円分布やさらに他の多変量連続分布でも考える.
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