研究課題/領域番号 |
24540146
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
古市 茂 日本大学, 文理学部, 教授 (50299327)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 一般化エントロピー / Skew information / 不確定性関係 |
研究概要 |
本研究課題では、主に、一般化エントロピーとSkew informationに関する研究を行っている.一般化エントロピーとは、RenyiエントロピーやTsallisエントロピーのようにShannonエントロピーのパラメータ拡張されたものを総称したものである.情報科学の分野では、Shannonエントロピーやダイバージェンス等が重要な役割をすることが多いが、それらの指標をパラメータ拡張したものが有用になる場合があり、近年はべき乗則に従う数理モデル・数理現象がしばしば話題になっている.本研究課題における一般化エントロピーとはこれらのパラメータ拡張をさらに一般化したものを用いて数学的な性質を論じることが主な目的である. そのうえで、平成24年度の成果として、まず、いくつかのパラメータ付ダイバージェンスに関する数学的不等式を示すことができた.これは、従来のダイバージェンスに関する不等式の経数拡張となっている. また、その延長として、一般化エントロピー自身に関する上限および下限を導出した。これは、数学的不等式に関するものでヤングの不等式の改善の結果を適用したものである. これらの結果が今後、情報理論の分野でどのように応用されていくかは現時点では不明であるが、今後、これらも頭に置きながら研究を続けていきたい. なお、これらの論文は、ルーマニアの数学者との共著である. 本研究課題のもう一点の重要な課題として、またskew informationと不確定性関係に関するものがある.シュレーディンガータイプの不確定性関係式から古典相関を少しでも排除した数学的関係式を得ようというのが主なモチベーションである。平成24年度は、Skew informationを一般化されたもの、すなわちmetric adjusted skew informationがあるが、この量に関する不確定性関係の導出に成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)Tsallisエントロピーから派生した一般化エントロピーやダイバージェンスに関する数学的な結果を得たのでその点は満足している。 その応用や工学分野における意義については不明確のままでありその点は満足できていないが、本研究課題では実施対象としていないので、大きく悲観はしていない。いずれ取り組みたいとは思っている課題である。 また、一般化エントロピーの公理的特徴付けについては、これまでの研究成果でかなり確立されてきたため、平成24年度のみに限ると、特段、新規の結果を得たわけではない点は、残念ではある。平成25年度に時間を割いて取り組みたいと思うところでもある。 (2)Skew informationに関する成果についてはおおむね満足している。特に、metric adjusted skew informationに対するシュレーディンガータイプの不確定性関係の導出について、山口大学の柳教授との共著で論文発表できたのはひと段落した感もあり満足している。この課題についてはもう少し残された問題があると思うので、平成25年度の問題としたい. (3)本研究課題では行列解析的な取り扱いによる行列不等式やトレース不等式に関する基礎研究も予定していたが平成24年度は、Specht比を用いた、相加相乗平均の不等式の改善に成功し、これを用いて作用素不等式の導出に成功した。この点は非常に満足している。ただし、量子情報科学へ直ちに応用できてはいない。
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今後の研究の推進方策 |
(1)一般化エントロピーに関しては、公理的特徴付けについても細かい問題が残されているので取り組みたい。独力で解決できない場合は、関係分野の専門家に協力を仰ぎたいと考えている. (2)シュレーディンガータイプの不確定性関係を、metric adjusted skew informationとmonotone pairに対する結果に発展できないか検討する予定である. (3)平成24年度中に、思いついた、あるスカラー不等式を証明することによって、作用素不等式を導きたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の最初の国際会議は東京で行われるINFORMATION2013での講演となる。発表内容は、一般化エントロピーおよび一般化ダイバージェンスに関する数学的不等式の予定である。東京開催のため、この出張旅費は不要であるが、参加費が4~5万円かかる。外国出張では、前期にPetz教授を訪ねてブダペストに一ヶ月程度訪問する予定である。研究の進捗状況および関係する国際会議があれば、秋以降にも外国出張をする予定である。 平成24年度に共著者として論文発表した柳教授の所属機関である山口大学に数回、訪ねたいと考えている。そのために国内出張旅費を使用する。 また、国内では、日本数学会、応用数理学会、京都大学数理解析研究所研究集会などへの参加を考えている。 旅費や学会参加費以外では、予算と相談して、パーソナアルコンピュータやその周辺機器の購入を予定している。 平成24年度は所属機関における競争的研究費も採択されており、出張旅費に関しては主にそれを使用した。そのため計画よりも17万円程度残金がでた。これは、平成25年度に研究代表者が所属機関からサバティカルを得て出張をする機会が増加することもあり平成25年度に17万円を繰り越すことにした。
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