研究課題/領域番号 |
24540147
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
矢島 幸信 神奈川大学, 工学部, 教授 (10142548)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 単調正規空間 / 位相積空間 / 定常集合 / 被覆性 / 正規性 / コンパクト空間 |
研究概要 |
積空間の正規性や被覆性の研究は始まりが1950年以前であるから、少なくとも60年以上も研究されてきた歴史の長い研究分野である。ここでは特に単調正規空間をファクターにもつ積空間の正規性や被覆性を考察の対象としており、我々が最初ともいえる積空間に関する新しい研究課題である。この研究が可能になったのは、20年ほど前のBaloghとRudin(現在では両者とも故人)により単調正規空間の位相構造を定常重合によって明らかにされたからである。彼らの定理を用いて、単調正規空間をファクターにもつ積空間の正規性や被覆性を研究することを思いついた。定常集合は集合論的に具体的な性質をもっており、積空間の正規性や被覆性という位相構造の研究は、必然的に集合論的な考察を必要とする。それは単調正規空間のファクターとどのような空間をファクターとして組み合わせた積空間を考察の対象とするかによって、種々の研究結果が得られる。 1)コンパクト空間をファクターとする場合の積空間の正規性とオーソコンパクト性(被覆性の一つ)の特徴づけは、完全に終わった。 2)コンパクト空間を位相ゲームにより一般化した空間に、DC-like空間と呼ばれるものがある。これをファクターにもつ積空間の正規性とオーソコンパクト性の特徴づけもほぼ終わったといえる。ただ、微妙なところで反例が成り立ってしまうという面もあり、この辺は今後の課題とも言えよう。 3)1点のみ孤立点でない空間をファクターにもつという単純な場合も、予想外に発展があった。通常の積空間では、正規性の方が長方形的という性質より強いというのが一般的である。しかし、このような特殊な空間をファクターにもつ積空間では、逆に長方形的のほうが正規性よりも強いという予想外の現象が現出する。 以上のようなことが分かってきたことは、当初の予想以上の成果ともいえよう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
共同研究者は大分大学の家本宣幸氏と神奈川大学の平田康史氏である。私が数年前に始めた研究であり、それなりに多少の研究結果は得てきた。そして途中で家本氏に研究に加わってもらい、さらにその後に平田氏に加わってもらったという経緯である。研究の基本的な部分は私と家本氏により方向づけられているが、その研究課題が多くの結果を生み出すことまでは予想していなかった。それに対して、平田氏はもともと集合論の研究者で、のちに位相空間の研究もするようになっただけに、集合論的考察には群を抜くものがある。彼は集合論の見地から本研究における重要性をいち早く察知したようで、位相空間論重視の立場からは予想できないような結果を次々と証明してくる。そのような状況で彼の貢献は目覚ましいものがあり、それによって本研究は加速度的に早まったといえる。つまり、位相空間論的考察と集合論的考察が、共同研究によってうまく化学反応を起こし機能したことが、この研究を大きく前進させたと考えられよう。
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今後の研究の推進方策 |
共同研究者である家本宣幸氏と神奈川大学の平田康史氏は、2つの基数の部分空間A,Bによる積空間A×Bを長年研究してきた。基数の部分空間は単調正規空間でもあるため、単調正規空間Xと基数の部分空間Bによる積空間X×Bは、より一般的な積空間となる。そこで前者の積空間A×Bで成り立つことが、どこまで後者の積空間X×Bで成り立つかを研究していく。主体となる性質は、やはりこの積空間の正規性と被覆性であろう。特に、X×Bがオーソコンパクトならば、それは正規かつ長法的かという問題から考察を始めていくのが適当と思われる。 一方、基数の部分空間と単調正規空間のクラスの間に一般的順序空間のクラスがあるので、一般順序空間Yと基数の部分空間Bの積空間Y×Bについては、当然にX×Bの場合よりは強い性質が成り立つことが予想される。この積空間Y×Bにおいては、長方形的であることと加算パラコンパクトであることの関係を考察していく。最も良い結果は、これらの2つの性質が同値になることである。無条件で成り立たない場合でも、適当な条件を考えての部分解くらいは得られると考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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