研究課題/領域番号 |
24540149
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
齊藤 公明 名城大学, 理工学部, 教授 (90195983)
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研究分担者 |
三町 祐子 名城大学, 理工学部, 准教授 (00218629)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 無限次元ラプラス作用素 / 無限次元確率過程 / 超汎関数空間 / 量子情報論 / 符号力学系 / 数論的確率論 / 量子確率論 / エルゴード理論 |
研究概要 |
本研究の目的は, 確率論,解析学,グラフ理論,数論,計算機科学のそれぞれの専門分野から総合的に応用に適した無限次元確率解析を共同研究し,その立場からの量子化法,さらに量情報解析として新しいアプローチを展開することにある.特に,レヴィのラプラシアンの一般化(Exotic Laplacians) に基づいた確率解析をもとに,量子情報解析を展開することにある.本年度はこのエキゾチック・ラプラシアン(EL)に基づいた確率解析を基にホワイトノイズ(WN)理論において新しい展開を行った.主な成果は以下の通りである.ELの働く空間はWNの高階微分の多項式によって生成されることがわかり、これが正にデルタ超関数の基底に対応していることも明らかにすることができた。成果は国際論文誌JFAに投稿している.この多項式はP.Levyの導入した正規汎関数とは異なり, ELが生成する無限次元確率過程の構成法に直結する.デルタ超関数を基底にした無限次元ブラウン運動のある種の微分がELによって生成される超確率過程となるという結果を得た. 本内容はイタリアで開催された国際会議にて招待講演として発表し, 国際論文誌QPWNAに掲載された. ローマ第2大学アカルディ教授とは, 本成果を普及するため,共著の専門書作成を始めている.加えて共同研究として, 高階チェサロ平均の連続化による関連したWN分理論の展開を続けている. この路線に沿った量子情報解析の構築が可能になったことは本課題の成果の大きな進展である. 本無限次元確率解析を抽象ウィナー空間上にて展開する研究もルイジアナ州立大学郭教授と共同で続け,この方向で進展が得られている.計算機実験の成果として,充足可能性問題において部分割当てによる伝搬を利用した学習に基づく3-SAT論理式の簡単化法およびアルゴリズムを提案し,応用数理学会論文誌に投稿している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高階ホワイトノイズ微分に基づいた確率解析の基礎理論において,エキゾチックラプラシアン(レヴィラプラシアンの一般化)の働く超汎関数空間の基底として,レヴィの正規汎関数とは異なるホワイトノイズ高階微分の単項式をとることができることを証明した.この成果を得られたことは大きい進展で,量子ホワイトノイズの高階微分理論へと具体的につなげる橋渡しが構築されたことになる.この基盤に基づいて確実に平成25年度はこれを更に進展させることが可能になった.研究協力者のアカルディ教授との間で今までの研究成果に基づいて専門書の執筆を共同で進行中である.新しいホワイトノイズ理論の展開として公表し,本研究を普及させることを目的としている.計算機実験においても,充足可能性問題に関する数値実験を行ない,部分割当てによる伝搬を利用した学習に基づく3-SAT論理式の簡単化法を提案することができ,応用数理学会論文誌に投稿している.この成果において新しいアルゴリズムも提案している.更に,節の総数と節内のリテラル数の変化に関する結果として,興味深い確率分布を得ることができ,詳細を調べ続けている.また,上記ホワイトノイズ理論との関連性も合わせて調べている.理論面・実験面双方において順調に進展している.今後,数論的確率論,力学系理論との関連性につなげる.
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今後の研究の推進方策 |
招待者については,平成24年度の予定のうち,来日出来なかった研究者を優先する.計算機設備については早めに処理するため,平成25年度は,実質的な結果を出すことに集中する.結果は論文にて公表することとする.核関数可視化システムをより精密なものにする.各研究集会,セミナ-等において平成24年度で提起された問題の整理,解決法の議論,検討,結果のまとめを積極的に行い,成果をまとめる方向に収束させる.特に,1)無限次元確率解析,作用素解析関係,2)偏微分方程式論,超関数論(特に,Yang-Mills方程式に関する話題),3)量子計算論,量子情報論関係,4)無限次元確率解析の力学系理論,数論への応用,5)海外との共同研究 での成果を収束させる方向にもっていく.平成24年度で議論した1),2)における基礎理論から3),4)の応用へと展開する.今後の研究においては, ホワイトノイズと汎関数微分方程式を考察することや,力学系理論,数理物理,特に, 量子化として,ファインマン経路積分の超関数論的計算法, 確率過程量子化法,量子カオス論,量子計算への応用,経済学(特にファイナンス)への応用も含み,量子情報解析としての無限次元確率解析,ホワイトノイズ理論の展開を行なうため, 数値解析, 数式処理等計算機数学的手法も逐次利用して研究することを考えている.引き続きローマ第2大学ヴォルテラ研究所所長の L. Accardi教授およびルイジアナ州立大学 H.-H. Kuo教授には,研究協力者になっていただき,共同研究を国際的に進める.特に,Exotic Laplaciansに基づいた確率解析の展開を国際的に展開する.基盤が十分整っているため、順調に計画通り研究は進むと考えているが,特に計算機関係で研究が当初計画通りに進まない時の対応は,逐次研究分担者,連携研究者,研究協力者と相談して,方針を検討し対応する.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画・方法としては, 1) 数学, 物理, 経済等関連分野のセミナ-を開き, 各界の研究者達との議論,共同研究を行う. 2) 他大学, 関連機関等の研究者にレヴュ-としての講演を依頼する.3) 海外の研究者との共同研究.4) 関連の研究集会への参加及び研究発表.5) 計算機数式処理システムの充実と量子計算などの数理的実験.などを中心に考えている.米国,イタリア,韓国との間で特に,ローマ第2大学Accardi教授との無限次元確率解析と量子確率論との共同研究,ルイジアナ州立大学の郭教授との抽象ウィナー空間上の確率解析の共同研究,非可換幾何学、量子情報論への応用のためインドCSIRのSihna教授および東北大学の尾畑教授との共同研究,韓国のJi教授とのホワイトノイズ理論の共同研究などのための情報交換,セミナー、講演会などを行なう.韓国大田におけるワークショップでの成果発表(招待講演),モスクワにおける量子論と無限次元解析に関する国際会議での成果発表(招待講演)他国内での研究打ち合わせ,学会発表を予定している.モスクワではステクロフ数理研究所 Volovich 教授, モスクワ大学 Smolyanov教授との共同研究のための情報交換も行なう.
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