研究課題/領域番号 |
24540151
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研究機関 | 佐世保工業高等専門学校 |
研究代表者 |
中尾 充宏 佐世保工業高等専門学校, 校長 (10136418)
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研究分担者 |
木村 拓馬 早稲田大学, 理工学術院, 次席研究員 (60581618)
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キーワード | 精度保証付き数値計算法 / 解の数値的検証 / 解の事後誤差評価 / 非線形発展方程式 / 楕円型方程式 / 計算機援用証明 |
研究概要 |
放物型方程式の初期値境界値問題を対象に、解の精度保証方式について検討した。また、それと関連して楕円型方程式の解に対する数値的検証手順の改良についても検討し、次の成果を得た。なお本検討に当っては、研究分担者の木村拓馬(早稲田大学)および研究協力者の木下武彦(京都大学特任講師)、渡部善隆(九州大学准教授)にも協力を依頼して進めた。 (1)熱方程式の初期値境界値問題に対し、空間方向半離散化後の線形常微分方程式系に対して、基本解行列を用いて、時間方向全離散近似解を与える新しい有限要素スキームを提案し、その構成的a priori誤差評価定数を算定した。 (2)非線形放物型問題に関する線形化逆作用素のノルム評価について検討し、(1)の成果を援用して構成的a priori評価法を与えた。さらにその効率化についても検討した。 (3)放物型方程式の時間周期解の数値的検証に向けてその定式化を検討し、熱方程式の半離散化常微分方程式系に対する基本解行列を用いた、構成的表現法を見出した。 (4)非線形楕円型問題に対する線形化逆作用素のノルム評価について検討し、ある種の問題に対しては、従来の手法を大幅に改善できることを明らかにした。 (5)研究代表者らが楕円型作用素に対して開発した固有値の除外(excluding)手法を一般化してHilbert空間において定式化し、それを用いた効率良い逆作用素のノルム計算法を与えた。実際の楕円型問題に対して適用し、それが従来の方式に較べて格段に効率良いものであることを実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の主要な目的は、楕円型方程式で確立された数値的検証の技法を、非線形放物型方程式をはじめとする発展方程式に対して拡張して適用し、その有効性を実証することにある。昨年度は、簡単な線形熱方程式に対する全離散型有限要素解の構成的誤差評価を導き、その結果を用いて非線形発展方程式の解に対するNewton型数値的検証法の定式化とプロトタイプな非線形放物型方程式への適用法の基本的な定式化を与えた。今年度はその具体的適用例を与えることによって方式の実用性を示すことができた。この結果は、既に国際シンポジウムで発表されるとともに、SIAM Journal on Numerical AnalysisおよびNumerische Mathematikという、2つの世界で最も権威ある学術誌に採択・掲載されている。この事実は、代表者らが開発研究してきた精度保証の原理が、そのまま発展方程式に対しても適用可能であることを実証するものであり、そのインパクトは大きいであろう。さらに、周期解の検証も定式化され、今後数値実験によってその有効性を確認するのみとなっている。 一方で、楕円型方程式に対する線形化逆作用素ノルムの数値的算定の研究においては、空間設定を変更することによって、一層効率よい逆作用素の存在検証ができることが明らかになった。この結果は、アメリカ数学会発行の一流論文誌であるMathematics of Computationに掲載されており、今後一層の波及効果をもたらすものと期待される。さらにあわせてドイツKarlsruhe大学のPlum教授と共同で研究していた、楕円型作用素の固有値除外法の研究では、代表者らが確立した手法による新たな除外法が定式化され、実際問題での有効性も確認されるに至った。この結果は既に、SIAM Journal on Numerical Analysisに掲載が決定しており、得られた成果の質の高さを示している。 これらの事実から、本研究は当初計画以上に進展していると判断するものである。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究実績を踏まえて、研究分担者および研究協力者とも連携して、次の課題を設定して、以下の検討を行う。 (1)前年度得られた、熱方程式の全離散有限要素解に対する構成的誤差評価のさらなる拡張・改良について検討する。また、スペクトル法など、有限要素法以外の近似スキームに対する誤差評価についても検討する。(2)放物型問題の時間周期解の検証条件を定式化し、prototypeな問題について検証数値例を与える。(3)時間発展的に、反復して放物型問題の解を包み込む手法について検討する。(4)反応拡散方程式系など、実際問題の解の包み込みへの適用を試み、方式の実用性を実証する。(5)発展型Navier-Stokes方程式に対する解の数値的検証法の定式化に向けて、発展型Stokes方程式の解を精度保証付きで求める手法について検討を行う。(6)発展型問題が定常問題の解に至るプロセスを一貫して検証可能な手法について検討する。(7)楕円型方程式について、これまでに開発・実装された各種数値的検証法の適応性を評価するとともに、その一般化と改良を図る。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画していた一部の研究会議への出席を取りやめたこと、および格安航空運賃の利用等により、旅費の支出に余剰金が生じたため。 当初企画していなかった国際シンポジウム(ドイツ)への出席を計画しており、そのための旅費支出が増大する。また、国内の研究打合せの回数も増えることが予想され、次年度末には残額が0となる見込みである。
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