(1) 確率的最大不等式とその応用に関する論文における議論を完備化し、改訂版を投稿した。具体的には、まず狭義可算族の概念、列的接近可能族の概念に関する考察を深めた。また、確率的最大不等式の証明を、伊藤の公式を用いてエレガントな方法で与えた。それらを用いて、無限次元マルチンゲールの最大値に対する不等式を証明し、確率場の緊密性の判定条件へ応用した。統計的には、セミパラメトリック Z-推定量の漸近表現の導出が可能となった。 (2) 佃康司との共同研究として、変化点問題に関する一編の論文を国際学術誌に出版した。より具体的には、推定方程式の解を、推定方程式の部分和確率過程にプラグインし、その二次形式を考えることによって変化点の存在の検出のための新しい方法を提案した。その際には、ヒルベルト空間に値をとる確率変数の弱収束理論を用いて証明を行った。 (3) Ilia Negri との共同研究として、Z-推定量の性質とその応用に関する二編の論文を完成させ、学術誌に投稿した。より具体的には、非エルゴード的なモデルにおける変化点問題を考察する論文を完済させた。また、Z-推定量の高次モーメントの収束を得るための十分条件を提示する理論を構築した。それらを拡散過程モデルにおける離散観測問題や、Cox 回帰モデルに適用した。モーメント法によって得られる推定量に対しても同様の理論が展開できることをあきらかにした。
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