研究課題/領域番号 |
24540156
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
伊藤 成治 弘前大学, 教育学部, 教授 (40193487)
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研究分担者 |
岡部 考宏 弘前大学, 教育学部, 講師 (00626872)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ナビエ・ストークス方程式 / ストークス方程式 / 非定常流 |
研究概要 |
1.扇型領域において,非定常ナビエ・ストークス方程式を線形化したストークス方程式の初期値境界値問題を扱い,その速度ベクトルを熱方程式の解とポアソン方程式の解の和として具体的に書き下すことによって,解の滑らかさが中心角の大きさによってどのように変わるのかを調べることを目的として計算を進めた。熱方程式については,解の滑らかさと中心角の大きさの関係がわかる具体的な解の表示式を得ることができ,これによって,最小限の重みを付けた関数空間(例えば,ヘルダー空間)において解の精密な評価を導くことおよび初期条件と境界条件の間の両立性の条件を最小限にすることが可能になることが期待される。引き続きポアソン方程式について同様の考察を進めている。 2.半空間上のナビエ・ストークス方程式に対するエネルギー減衰に対する下からの評価(lower bound)についての研究を行った。ナビエ・ストークス流は,線形ストークス流と非線形項による流れとに2つに分解されるが,エネルギー減衰が非常に遅い場合には,線形ストークス流が支配的になることが知られている。そこで,半空間の場合には,鵜飼氏により得られた解公式を駆使することで,線形ストークス流の減衰を詳細に解析し,下からの評価を導出した。特に,線形ストークス流は与えられた初期値により制御することができ,本研究では,エネルギーの下からの減衰評価を与えるような初期値の特徴づけに成功したことが特色である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.扇型領域における熱方程式の初期値境界値問題について,解の滑らかさと中心角の大きさの関係がわかる具体的な解の表示式を得ることができたことは大きな前進であった。しかしながら,ポアソン方程式についての同様の計算において,熱方程式の場合と異なる工夫が必要になり,予定より若干時間がかかってしまっている。 2.半空間でのナビエ・ストークス方程式のエネルギー減衰の下からの評価については,これまであまり知られていなかったが,初期値の周波数成分の分布の形状により減衰評価を導いたことは意義深い。しかしながら,2次元の場合については本結果を直ちに適用することができず,より詳細な解析が必要であり,今後の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
1.現在進行中のポアソン方程式についての計算を仕上げて,扇型領域における線形ストークス方程式の初期値境界値問題の解の滑らかさと中心角の大きさの関係がわかる具体的な解の表示式を得ることを目標に計算を進める。 2.半空間でのナビエ・ストークス方程式のエネルギー減衰の下からの評価について,減衰が遅い場合については,初期値による特徴づけが可能であるが,速い減衰の場合には初期値の性質による下からの評価はほとんど知られていない。これらの課題に対し,解の漸近展開等を用い,解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
非線形偏微分方程式の最新の研究成果を情報収集するための関連する研究集会への参加と研究者の招聘および学会での成果発表のために,旅費として450,000円を計上する。 また,解析学関連書籍購入のために64,365円を計上する。
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