研究課題/領域番号 |
24540156
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
伊藤 成治 弘前大学, 教育学部, 教授 (40193487)
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研究分担者 |
岡部 考宏 弘前大学, 教育学部, 講師 (00626872)
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キーワード | 流体数学 |
研究概要 |
1.扇型領域において、非定常ナビエ・ストークスを線形化したストークス方程式を扱い、その速度ベクトルを具体的に熱方程式の解とポアソン方程式の解の和として書き下し、解の滑らかさが中心角の大きさによってどのように変わるかを調べた。前年度の熱方程式に続いて、ポアソン方程式についても研究目的に必要な解の表示式を得ることができた。 2.流体力学における基礎方程式である非圧縮性ナビエ・ストークス方程式について、解の運動エネルギーの時間大域的挙動を解析した。境界や外力からエネルギーの注入がない状態では、ナビエ・ストークス流のエネルギーは減衰して消滅することが知られている。特に、エネルギー減衰の減衰オーダーや漸近形状の考察は、流体の運動やエネルギー散逸の構造を解析する上で重要である。本研究では、境界条件がナビエ・ストークス流に及ぼす影響を明らかにするため、半空間でのナビエ・ストークス流を対象に、エネルギー減衰や漸近展開について考察を行うことを目標としている。その為にまずは全空間でのナビエ・ストークス方流に対して漸近展開を行った。これについては、初期値に一次多項式のモーメント有界条件を仮定すれば、解の漸近形状がガウス関数の一階導関数を用いて求められることが知られている。しかしながら、モーメント有界性条件は、初期値の空間遠方での挙動を制限するものである。そこで、代替的な条件として、初期値の構造に着目することで、一次多項式のモーメント有界性条件を仮定することなく、ルベーグ可積分性のみで、解の一次漸近展開を導出し、その主要項をガウス関数 の一階導関数を用いて明示的に特徴付ることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.熱方程式に対する初期値境界値問題とポアソン方程式に対するノイマン問題において、具体的な解の表示式が得られたことは前進であるが、関数空間の設定にもう一段の工夫が必要である。 2.解の漸近形状の研究において、その漸近展開を求めることは重要である。特に、初期値の構造が主要項の決定に反映されることが明らかにされた。
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今後の研究の推進方策 |
1.解の滑らかさと中心角の大きさの関係をより精密に分析できる関数空間の決定を目指す。 2.解の一次漸近展開について、初期値の条件の一般化を考察する。特に空間遠方での制約条件を緩和することを目指す。全空間の場合の解析で得られた知見をもとに半空間におけるナビエ・ストークス流の漸近展開を行い、その漸近形状の決定を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
購入予定だった書籍が絶版等により入手できなかったため。 最新の研究成果の情報収集や成果発表のために旅費として450,000円計上する。また,書籍購入等物品費に101,170円計上する。
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