研究実績の概要 |
1.全空間における非定常ナビエ・ストークス方程式の解の長時間挙動を解析した。特に解の運動エネルギーの時間多項式減衰に関する研究では、初期値に対し1次モーメント有限や空間遠方での各点減衰などの制限下で、盛んに研究がなされてきた。また、解の漸近展開を導出することは、その漸近形状の解明のみならず、運動エネルギーの減衰オーダーを調べる上でも重要である。特に初期値に対して、空間遠方での厳しい各点減衰を要求すれば、高次の漸近展開が可能であることが知られている。加えて、初期値に対し、ある種の対称性を要求すれば、非線形項の影響が無視できない状況下での速いエネルギー減衰を導出することが可能であることも知られている。今年度は、これらの高次漸近展開および速いエネルギー減衰を、初期値において、既存の条件よりも弱い条件でも導出し得ることを明らかにした。特に初期値のクラスとして重み付きハーディ空間を用いることで、従来初期値に課されていた、有界性や各点減衰を取り除くことができたことが特色である。 2.前年度までに得た,平面の扇型領域における非定常ナビエ・ストークス方程式の線形化方程式の級数解を、扇型の角の開きの大きさに応じた重みを考えたヘルダー空間で評価した。その際、Borys V.Bazaliy, Nataliya Vasylyeva, Initial-boundary value problems in a plane corner for the heat equation, Electronic Journal of Differential Equations, Vol.2010(2010),No.90, pp.1-32 で使われている手法を参考にした。引き続き今回得られた結果を用いて、通常の逐次近似法により非線形問題を解析する予定である。 以上の結果は現在出版準備中である。
|