研究概要 |
今年度は主に、(一般化)微分型非線形シュレディンガー方程式の孤立波解の軌道不安定性について研究を行った。微分型非線形シュレディンガー方程式は、角振動数と並進速度という2つのパラメータに本質的に依存する孤立波解の族をもつという点が、通常の非線形シュレディンガー方程式と異なる。また、非線形項に未知関数の導関数が含まれ、微分の損失が生じるため、線形不安定性から非線形不安定性を導くことは難しい。 微分型非線形シュレディンガー方程式の孤立波解の軌道安定性については、以前の研究(M. Colin and M. Ohta 2006)により解明されていたが、今回は1パラメータ族の孤立波解に対する軌道不安定性に関して、リアプノフ汎関数を構成する従来の方法(Shatah and Strauss 1985, Grillakis, Shatah and Strauss 1987, M. Ohta 2011など)を、2パラメータの場合に拡張することにより、あるパラメータ領域において、微分型非線形シュレディンガー方程式の孤立波解が軌道不安定であることを示すことができた。 また、準線形シュレディンガー方程式の基底状態の軌道不安定性について、M. Colin(ボルドー大学)と共同研究を行った。空間3次元で非線形項が3次の場合、M. Colin, Jeanjean and Squasina (2010) などにより、条件付きで基底状態の安定性が得られていたが、準線形項の係数が十分小さい場合には、通常の非線形シュレディンガー方程式と同様に、基底状態は軌道不安定であることを示した。
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