研究課題/領域番号 |
24540166
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
児玉 秋雄 金沢大学, 数物科学系, 教授 (20111320)
|
研究分担者 |
清水 悟 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (90178971)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 国際情報交換 |
研究概要 |
複素多様体Mに対して,Aut(M)をコンパクト開位相を入れたMの正則自己同型全体のなす位相群とする.このとき,研究代表者児玉と研究分担者清水は正則自己同型群Aut(M)の位相群としての構造から複素多様体構造が決定されるかどうかという基本的な問題を研究してきた.特に,有界対称領域をその正則自己同型群から特徴付けることに成功し,その研究成果は論文として2010年に印刷公表された.今年度は,この結果から自然に起こる問題として「n次元複素ユークリッド内の対称とは限らない等質有界領域Dをその正則自己同型Aut(D)の構造から特徴付けることが出来るか?」を研究し,次のような定理を証明することが出来,論文として印刷公表されることが決定した: 定理.V及びWをn次元複素ユークリッド内の第一種ジーゲル領域とし,それらの正則自己同型群 Aut(V)とAut(W)はリー群として同型であると仮定する.このとき,ある種の条件を満たすような,VからWへの実解析的同型写像が存在する. この結果から「2つの第1種ジーゲル領域VとWが双正則同値である必要十分条件はVとWが線形同値である」という,良く知られた結果に別証明を得たえることが出来た. また,研究分担者清水は独自の研究として,チューブ領域上の完備多項式ベクトル場の決定に関する延長定理と呼ばれる結果,並びにそのチューブ領域に関する正則同値問題への応用結果を整理し,論文として発表した.そして,延長定理のさらなる応用として,チューブ領域T(Ω)で,その上の完備正則ベクトル場全体のなすリー環g(T(Ω))の各元が多項式ベクトル場であるものについての研究を進め,g(T(Ω))が可解リー環である場合にg(T(Ω))の構造を明らかにした.特に,g(T(Ω))に属する多項式ベクトル場の次数が必ず2以下であることを示した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的である「複素多様体の複素構造をその正則自己同型群の構造を用いて決定することが出来るか?」という複素解析の研究における基本問題は予想以上に難解であり,短期間のうちに完全解決することは非常に難しいと思われる.しかし,今年度の研究において等質有界領域の中で特別なクラスをなすものではあるが,第1種等質ジーゲル領域に関して非常に興味のある研究成果を得ることが出来,これらの研究成果を得るために開発した手法が,基本問題を解決する際に大いに役立つものになると思われる.このようなことから,本研究の目的はおおむね順調に進展していると判断した.
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究の進め方であるが,従来通りに,まずは我々の研究に関連して世界各国で行われている研究成果,特にその成果をあげる際に用いた研究手法を徹底的に吟味し,我々の研究に応用出来ないかどうかを調べる.しかし,本研究に関してここ数十年来行ってきた我々の研究経験からして,最後は我々自身で問題の本質をじっくりと考え抜き,試行錯誤で問題解決に当たるほかにはないものと思っている.このようなことから,本研究に際して,現在の 研究計画を本質的に変える必要は無いと思い,問題解決に邁進する.
|
次年度の研究費の使用計画 |
我々の基本問題の解決には本質的に重要なアイデアが必要であることは言うまでもない.数学の研究において,使えるアイデアはときとして他分野の研究の中に見いだせることがある.このようなことも頭の片隅に置き、関連分野のみならず他分野の研究集会にも出来るだけ多く参加し,基本問題解決の糸口を見つけたい.このことから,研究費の大部分を国内外での研究集会・シンポジウムへ参加するための旅費に当てることにしている.勿論,研究を継続するための書籍・消耗品の購入にも必要最小限の予算を計上した.
|